甘い幸せ
今日はクリスマス。 「アッちゃ〜ん、オレ、アッちゃんの作ったケーキが食いたい〜…」 そう、マー坊が言うもんだから。 真里のお願いは決して断れない秋生は、今、もちろんクリスマスケーキを製作中である。 生クリームに砂糖を入れ、甘さ加減を確認する。 人差し指にクリームを掬い取り、ペロリと舐める。 秋生はそれほど甘い物が好きではないので、そこそこ甘ければそれでいいだろ、と思う。 「あ〜、アッちゃん、ズリ―よォ…オレも〜」 傍らで、るんるんvと秋生の作業を見守っていた真里が言うので、 「…ほら」 人差し指にクリームを掬い取って差し出す。 主に作業を行なうのは秋生なのだが、とりあえず張り切っている真里は 真嶋家のエプロンを装着中。 ――こーしてると、まるでオレら新婚さんみてーッ!! と秋生は1人頬を染め、悦に入るのだった(…) 「わ〜いvv」 そう言って、真里は秋生の指ごとパクッと口に含んだ。 どあああッ!!(←秋生の心の叫び) その瞬間。 ビリッ、と真里に咥えられた指先から全身へと、電流が流れたような気がした。 心臓がバクバクしている。 ―――ヤバイ…マジで、オレ… 固まって、身動きができないでいる秋生を他所に、 「あ〜…もっと甘い方がよくねえ…?」 と言って、真里が覗き込んでくる。 「あぁ…?…そっか?」 1人でドキドキハラハラしていた秋生は真里に言われるまま、どばどばと砂糖を追加する。 もー…ちょっと甘すぎよーが、どーでもいいべ… キラキラとした瞳で見守っている真里を見ていると、 ―――もう、マー坊のイイ様にしてやろう…と無条件に思えてしまう秋生なのであった。 …どうしてオレはこんなにマー坊に弱いのか…。 マー坊のコト、好きで、可愛くてしょうがない。 気付けばこーなってたんだから、理由なんて分かんねーけど…。 ――ハァ…(何故か溜息) 「こんなモンでどーよ…?」 またクリームを掬って真里の前へと差し出す。 「んーvv」 今度はペロリとクリームを舐めて、秋生の指をその舌先で掠めていく。 「んー!甘い…うめ〜ッ!!vv」 また1人、ビクリ、と身を強張らせていた秋生(←学習しねーな…) 真里の満面の笑みを見て、何だかとても幸せな気持ちになる。 「…うめーか?」 「ウン!やっぱー、アッちゃん料理上手いよネ?vv」 そう真里に褒められて、秋生は苦笑する。(実際、コレは料理というのか…笑) さて、夜。 クリスマスは愛情たっぷり、手作りケーキを2人で食べよう。(ちなみに夏生は外出中) ……で。 秋生は浮かない顔をする。 ……なんでだ。 ……普通、こーゆう日は2人きり…てのが普通だろ。 せっかくアニキもいねーっていうのに。 周囲の爆音メンバーを見渡して思う。 なんで、勢ぞろいしてんだよ? 何故か真嶋商会はいつもの爆音のメンバーで賑わっていた。 ケーキを囲んでウキウキしている。 「オオ…マジでアッちゃん作ったん?」 「美味そうーー」 「やっぱ、ここ来て良かったvv」 「そーそー、俺ら寂しいんだよー」 ……てか、帰れよ。 何勝手に上がりこんで、落ち着いてんだオメーらは。 「オレも作ってくれる奴がいたらなぁー…」 しみじみとカズが言う。 オレはマー坊に作ってやったんであって、決してオマエ等に作った訳じゃねーぞ…。 てゆーか!リョー、オメーだけはここにいる事に納得できねーゾ?! 京子は…?? 「もーアッちゃんサイコ―だよネ?」 「オウヨ?!やっぱ〜アッちゃんは爆音の母だべ〜!!」 ……母?! 「アッちゃんと結婚するヤツは幸せだべ〜〜」 「ケーキ作って貰えるモンね?いいな〜〜」 無邪気に羨ましがっている真里に、半ば本気で(…)聞いてみる。 「オー、じゃ、マー坊ヨメにくるか?」 『……』 一同ちょっと引いた。 ―――本気だ… ―――冗談っぽく言ってるけど、アレは本気だべ… ―――てゆーか、本気でよくそーゆーコト言うよな… ―――ああ…何か恥かしいべ、アッちゃん 「え〜?何ゆってんの〜アッちゃん…」 フッ、やっぱなー、こね―よなー(そういう問題か) とか思いながら苦笑する秋生だが。 「オレとアッちゃんなら〜ヨメはアッちゃんじゃん?」 『……』 一同またちょっと引く。 ―――そーゆー問題? ―――てか、アッちゃんがヨメなの? ―――まー確かにアッちゃんの方が家庭的だべ。 ―――アッちゃんはいーのか、それで… 秋生は秋生で、オレがヨメッ?!とかなり動揺(笑) それはちょっと違うべ…とか思ってみたり。 でもよ〜、見せかけのヨメなら…(←なんだよ、見せかけって!) 普段はヨメのふりしといてー…いざとなったら… 等など、謎の思案した結果。 「…いーぜ?じゃーオレがヨメに行ってやるヨ…?」 「わ〜い!」 十分本気の秋生(笑)に対して、もちろん本気にしてない真里は軽く答える。 ―――ってゆーかアッちゃん何言ってんの…マジで…。 というのは爆音の皆さんの心中。 「ねー、早くケーキ食お〜よ〜?」 ハッキリ言って、真里は目前のケーキに目を輝かせている。 「…オーシ」 本気の申し出を軽く流されて悲しい秋生だが、慣れているので平気である。 何事もなかったかのようにケーキを切り分けようとする。 ―――さすがだべ…アッちゃん!(←何が・笑) その姿は近くで見守る爆音の皆さんの涙を誘った。 「オレの一番デカイやつ〜〜vv」 「おうよ」 ウキウキと秋生がケーキを切るのを見守っている真里。 で。 ―――っ甘!! 真里仕様の糖度の高いケーキを一口食べた爆音の皆さんは思う。 どうりで秋生の皿に取られた分が少ないワケだ。 真里は幸せそうにニコニコしながら食べている。 そんな、真里を見守る秋生の顔も幸せそうだ。 ―――アッちゃんがヨメに行ったら、マー坊くんに合わせていっつもこんなモンを作んのか…? ま、アッちゃんが幸せなんだったらイイか。何でも…。 しかしそれは、ちょっと憐れなものを見るような感覚だった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「甘い幸せ」って!!ケーキが甘くてマー坊が幸せなだけです!!(笑) ま、アッちゃんもアレはアレで幸せらしいですけど……。 ううん?何でしょうかね?ホントに。 アッちゃんがヨメなのは微妙に攻めに転じたいマー坊(アキマー天国・10巻より…)の影がちらつきます (笑) アッちゃんは主婦…というか主夫でイイんじゃないでしょうか。マー坊のためなら! 家事出来そうなのでね☆ 色々とお世話になった染井さんへ捧げますvv(第2弾) (2003.12.23) 戻る |