☆後日/緋川さん
![]() ふわり…と。 突然、頭にきたやわらかい感触に驚いて土屋は顔をあげた。 視界にはいるのは自分の横を何も言わずに通り過ぎて行く緋咲の後姿。 それは声を掛けそびれているうちに寝室のドアの向こうへと姿を消してしまった。 土屋は何が起きたのか分からずにしばらくパタリと閉じられたそのドアを見つめていた。 …なんか今、緋咲さんが通りすがりにオレの頭を撫でていったような… ダイニングのテーブルで新聞を読み耽っていたところに突然の出来事で なぜ緋咲がそんな事をしたのかさっぱり分からない。 緋咲さんが…オレの頭を…? オレ、なんか誉められるような事したか? 緋咲さんとは昼に一緒に飯食べたきりだよな。別になんもなかったし…? いやいや、仮になにか誉められるような事があったとしても 緋咲さんが人の頭を撫でるなんてお茶目な真似するわけが… 土屋は頭の半分でそんな事を考えながら、もう半分はぼーっとしていた。 何故ならとても気持ちが良かったので。 あの細い指がやさしく自分にさわってくるなど一体いつ以来だろうか。 大体において緋咲との接触は拳による一方的なモノだったりするのだ。 訳が分からないながらも土屋が幸せな気分に浸ってると、 同じテーブルでポテトチップスを食べながらテレビを見ていた相賀が顔を向ける。 「どしたん?もう頭は大丈夫だろ?」 は?頭?土屋は何の事かわからずきょとんと相賀を見る。 「ホラ、お前でっかいコブできてたろ?昼ごはんの時、テレビ修理しなきゃって話してたからなー」 相賀はちょうど始まったテレビ番組に視線を戻しながら言う。 コブ…。そういえば確かにこの間朝起きたらでかいコブができていた。 目が覚めたとたんズキズキと痛む頭に手をやってみると額の右上あたりが嫌な感じでふくらんでいる。 その原因がさっぱり思い出せなくてベッドに起き上がったまま考え込んだ土屋の視界に チラリと紫の髪が映る。 そこで初めて土屋は自分が緋咲と一緒にベッドに寝ていた事に気がついた。 な、な、な、何故ーっ!? 一瞬軽くパニックになる。 痛む頭で必死に昨夜の事を思い出そうとするが、何故こんな状態なのかどころか 何時ベッドに入ったのかさえ思い出せない。 隣ですやすやと眠る緋咲の顔を見つめながら、土屋が出した結論は (多分、昨晩オレは果敢にも緋咲さんにチャレンジして返り討ちにあい記憶が吹っ飛んだんだろう) という悲しくも現実的な推測だった。 確かにそんな事はあった。 が、今一つ釈然としない。 今まで緋咲がケガの心配をしてくれたなんて事はない。 少なくとも自分で殴っておいてしかもそれがオレのしつこいアタックのせいならば考えにくい。 それにテレビの修理はどうつながるのだろう。 相賀に問いただしてみるとなんだか含みのある表情をされる。 「…お前、自分がどうしたか覚えてねーの?」 呆れたように返されて土屋はへこんだ。 …やっぱりオレ緋咲さんに迫って怒られたのか?! しかもコイツのいる前で?記憶が吹っ飛ぶ程殴られるような怒らせ方を? 土屋は相変わらず真っ白なままの頭を抱えながら いっそ思い出さない方がいいんじゃないかと悩みはじめた。 そんな様子を眺めながら相賀は心の中でつぶやく。 何をしたかじゃなくて何をされたかと言うべきだったかなぁ? だが言いなおそうとしてやめた。 この男はなんだかとても損な性格をしていて、なにかにつけちょっとづつ不幸だけど、 基本的にはとても幸せな人間であると思うので。 コイツと緋咲さんを見ていてそう思うので。 まぁ、細かい事はどうでもいいだろう。 相賀はさっさと結論をだすと再びテレビを見始めた。 その横で土屋は半日ばかり悩みつづけていた。 -------------------------------------------------------------------- 自分的にはこれは土←緋なんですが…。 薄味過ぎますかね(笑) ☆★☆★ (チイ) 何だか幸せな土屋。(しかし傍から見て幸せな土屋/笑) もう、土屋がワンコロっぽくてとても可愛いんですけど…!! そして個人的に「緋咲さんにチャレンジ」にウケてしょうがない…!!(笑) …時折優しい緋咲さんって、(普段とのギャップもあり…)もう〜たまらんですよねーvv (2004.8.20) 戻る |