夏の花火、その下で









夜空を照らし出すのは大輪の夏の花。

そして、体の内側にまで響いてくる打ち上げ音。

それが一定のリズムで続いている。




夏といえば、花火大会。その会場で。

オレの横にいるのはどういうわけか龍也。

最初は爆音の皆と一緒に居たはずなのに、気がつけばオレ達二人だけになっていた。

つまり、…人ごみの中、皆とはぐれた。

大勢の人で賑わうこの花火スポットでは、もう一度合流するのは難しそうだった。

しょうがなく、特にあてがある訳でもなかったが、オレ達はブラブラと歩いてた。




…よりによって、なんでリューヤなんだよ。

オレは横にいる龍也をチラリと見て思う。

アッちゃんとか、夏生さんと一緒だったらはぐれても別に良かったのに。

龍也と2人きりだなんて、落ち着かない。



「おい、マサト。オメー帰り道知らねーんだろ?はぐれんなよ」



そう。実を言うと、オレは今年初めてここの花火大会の会場に来た。

だから、実は道がさっぱりわかんねー。

だから、一人になったらここどこ?状態になってしまう訳なんだけど。

…龍也にエラそーにされるくらいなら、その方がマシという気もする。

だいたい、この人の多さに疲れる。

普通に歩く事さえままならない。




花火見るどころじゃねーじゃん…。

先ほどから、もう花火は佳境に入っているに違いない。

光と音の勢いが増してきている。

だけど、人の波をぬって当てもなく歩いているオレたちは、

ハッキリ言って、それほど花火を見ていない。

油断すると人にぶつかる。




オレは立ち止まり、顔を上げて夜空を、そして花火を見上げる。

龍也もオレの横で空を見上げる。


突っ立っていたところを、案の定、人にぶつかられる。

「わっ…」

バランスを崩したオレは、龍也の胸元に顔を埋めるような状態になってしまって。

シャツごしに伝わる龍也の生身の体温が、熱い。

密着した体を通して、龍也の鼓動が聞こえる。

そして。

言い訳出来ない程度にオレの心臓の鼓動は早く激しい。




ああ、最悪。

どうして。

そんなつもり、無い。

……そもそも、そんなって何。

……こんなの気まずい。




自分の鼓動に自分で言い訳したいオレ。

だけどうまい具合に花火の音がそれをかき消す。

…フィナーレだ。

これでもか、というほどに一斉に花火が打ち上げられる。

空が明るく染まり周囲で歓声が上がる。




顔を上げるとオレを見下ろす視線とぶつかる。

いつもの冷酷そうな視線がオレを見下ろしてる。

…いつもと変わらない表情で。




何、見てんだよ。

…見んなよ。

花火 見ろよ。





――あたり一面、光で溢れる。

轟音が体を内側から席巻する。

皆の視線は夏の空。大輪の花火に集中する。

まるで、真昼のような明るさの中。

時が止まったかのようなその瞬間に。




オレ達は 花火も見ずに互いを見ていた。




「……」


言うべき言葉なんて、無い。

何も。

無い、ハズ。






周りが闇に戻っても




オレ達の視線は、まだ




絡み合ったまま。

















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●出会ったのが、アッちゃんや夏生さんだったら手ェ繋ぐんじゃないかな。
はぐれないように。……恥ずかしげもなく。

さて、こういう青春!(?)みたいな龍マーってどうでしょう(笑)
せ、青春っていうかさ…。お互い押し殺しラブみたいな感じで…。
そういう歯がゆい感じもとても好きなのです!歯がゆく、イライララブ(意味不明)とか。
押し殺しラブな感じは龍マーではやっぱりマー坊ですよ。
秋マーはラブラブなんでアレですが、押し殺しラブをするならやっぱりアッちゃんですよ。
一人、ドキドキウジウジ…ムラムラ(←オイ…)してたりするのにも萌えとか思います。
たまにそういうの、凄く捏造したくなります(笑)

大阪にはPLの花火ってのがあるんですけど、フィナーレは本当に夜じゃなくなります。
光と音が半端じゃないんです。そんなイメージで書きました。
風流かと言われれば全く風流ではナシ。


(2004.8.11)
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