春。
穏やかな風が吹く中、真里は誠の愛機であったCB400Fで乱高に登校した。 ―――今日から俺が、この単車で爆音小僧7代目だ。 真里は愛しそうに、その単車に向かって微笑みかけた。 以前の持ち主へ、微笑みかけているかのように。 龍也は自分の教室から、校庭を突っ切る真里を見下ろす。 真里が乗っているのは、忘れもしない誠のCB400F。 それを見て、カッと頭に血が昇る。 ……バカじゃねえのか…?今さら 龍也は自分が怒りを感じているのを認めた。 真里がいつまでも誠に拘っているのが、ムカツクのだ。 「リューヤ…!」 プール下で。 都合の良い事にお互い1人だった。 止める者がいなければ、喧嘩が始まるのは当然で。 ガツッ! 龍也は真里の拳を顔面に受けたが、構わず殴り返す。 真里はその拳に顎を捉えられ、脳みそを揺さぶられて後方の壁に激突する。 「……ッ」 2人は血を流しながら向かい合う。 「リューヤァ…ぶっ潰してやるからよ…」 壁に腕をついて体を支え、口の端から血を流しながら、それでも龍也を睨みつけて言う。 ニヤリ、と口端を吊り上げゆっくりと真里に近づいてくる龍也。 「威勢がいーじゃねーかよ?」 反撃するために、真里は己の拳を握り締める。 「それよかよ…この前の続き、しよーぜ…?」 この前の続き、しよーぜ…? 龍也はそう言って真里の首筋に舌を這わせる。 ―――この前の続き ビクリ、と体を強張らせ、真里はそれを思い出す。 すっかり、記憶の中から忘れられていたけれど。 …冬の日。あの場所で。 あれは一体何だったのか。その意味が分からなくて。 今さら、あの時の事を思い出した真里。 忘れてた、というよりも何だか現実味が無くて。 「何言って…」 あの時の記憶が蘇る。 強引に押し入って、己を蹂躙する龍也。 その嵐のような激しさにクラクラした。 圧倒的な力でねじ伏せられる、恍惚。 首筋にかかる息と濡れた感触に、思わず肌が粟立つ。 「…いい加減にッ」 己の思考を振り払うかのように、渾身の力を込めて龍也を殴りつける。 「マー坊!!」 真里を探して現れた秋生が叫ぶ。 秋生はそこに龍也を認めて、身構える。 真里が龍也とぶつかる事は、もうずっと前から分かっていたから。 「…秋生かよ。…オメーが、特隊か…?」 今しがた、真里に殴りつけられて流れた血を拭いながら、秋生に向き直る。 秋生は、すっ、と真里と龍也の間に立ちはだかるように立つ。 真里は壁に押しやられた体勢のまま、龍也を睨みつけている。 ―――オレをほっといて勝手に始めんなよ…マー坊… 真里が血を流しているのが、秋生は気になる。 「…ワリ―けどよ、オレらぁ、爆音の7代目だぜ…?」 「…ふざけろよ…、上等だぜ…?」 龍也は秋生を睨みつけて言う。 「爆音は…もう、終わってんだよ…?!あぁ?」 「リューヤッ、てめえ…」 思わず飛び出そうとする真里を秋生は腕を出して制する。 龍也はそんな2人を見て愉しそうに笑う。 「よォ…マサトォ、誠の事忘れてーんなら、…俺が忘れさせてやんぜ…?」 「……な、」 一瞬、真里は言葉に詰まった。なんて言い返したら良いのか分からなかった。 それ以前に、龍也の言った言葉の意味を考えてしまった。 ―――誠の事忘れてーんなら 自分は決して誠の事を忘れたいとは思ってない。 ただ、その死が悲しすぎて辛いだけ。 忘れたい、なんて事、絶対無い。 返す言葉が見つからない真里を冷たい目で見据える龍也。 「…フン」 そう鼻で笑ってクルリと踵を返す。 「…リューヤ!」 秋生がそんな龍也に言う。 「分かってんだろーけどよ…マー坊の敵はオレの敵だかんよ…?」 「……上等だよ…」 龍也は秋生の事を気にした風でもなく、そのまま校舎の方へと姿を消した。 秋生には、以前からの知り合いである龍也と敵対するのには、やはりまだ少しの戸惑いがある。 そんな戸惑いを振り払うかのように、己の信念を龍也に告げた。 「…マー坊?…どうしたよ?」 先ほどから感じている真里の違和感を、確かめるように振り返る。 「……あ」 普段考え込む様な事は稀な真里なのだが、ある事に関しては非常に神経質になる事を 秋生は知っていた。 ―――誠の事忘れてーんなら、…俺が忘れさせてやんぜ…? そう言った龍也。 秋生は、真里が誠の死を今でも昇華し切れていないのを知っている。 あのヤロウ……。 真里の弱い部分に直接踏み入ってくる龍也を憎らしく思った。 そして、そんな弱い部分を持つ真里を不憫に思うと共に、苛立ちを感じた。 「…何でも…」 何でもナイ、と言おうとする真里。 真里にとって、誠の事が何でもない訳が無い事は、秋生には分かりきっていた。 しかし、秋生自信がそれをどうしようも出来ない事実に苛立つ。 黙って、真里の頭を自分の胸に押し付ける。 「……アッちゃん…?」 まだ、春。 まだ冷たい風が、2人を嬲り、通り過ぎた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― はらら……。まだ、春。マー坊、反撃出来ず、グラグラしてます(笑) 龍也は誠←マーにムカツクという事で…。 龍マーは、龍←マーとか言ってる私ですが、どうも龍←マーなカンジになりません…。 オカシイな…。次こそは!! 日々、龍マーの事考えてるんですが、それがちっともSSに生かされません(笑) その龍マー考察はイミあるのか…。染井さんにネタ出しまでして貰ってるのに。生かせなくて…アイタタタ。 そもそも体育倉庫ネタが書きたいがために始めたのに、何書いてんだ…。 いや、体育倉庫に行くまでにも順番ってもんがあるかなー…とか思っちゃって。 そして、アッちゃんが秋→マーなのはウチのサイトの基本です。…アッちゃん書いてると落ち着く(笑) (2003.12.3) 戻る |