春。3
誠が死んで。 オレの中には悲しみよりも怒りの方が多く存在した。 アイツの事、決して好きだったわけでは無いが、ある意味では認めていたのは事実だ。 アイツの速さは認めていた。 オレは事あるごとに、前を走る誠のテールランプを見せつけられた。 速さで自分が負けてるという事実にはムカツイたが、いつかは負かしてやろうと思っていた。 …その矢先だ。 オレがムカツクのもしょうがねぇだろ。 勝ち逃げか? そんなモン許せねえよ。 …あのムカツク単車でマサトが現われた時。 ああ、コイツはどーしたって誠から離れられねんだと分かった。 誠に人一倍懐いていたマサト。 誠に対するその思いは全く違うものだけど、その思いの強さは知っている。 オレ達はたぶん…同じくらい強く誠にとらわれているから。 死んじまって、いなくなった今でも。 …むしろ今になってその存在感を主張するアイツに。 オレはやっぱり苛立つ。 そんな事を考えながら深夜に帰宅すると、部屋の前に人影が。 ドアに凭れかかって座りこんでいたソイツは、オレが階段を昇って来た音に反応し、オレの方に顔を 向ける。 昼間の動揺した表情とはうって変わって、落ち着き払った顔をしている。 「…どーしたよ、マサトォ?昼間の事、試してみる気になったのかよ…?」 ムッとした表情で立ち上がり、オレをまっすぐに見据える。 オレもその視線を受けとめて、決して逸らさない。 マサトはいつもの生意気な顔に笑みを浮かべ挑戦的に言う。 「リューヤ…オメーは何か勘違いしてんか知らねぇけど、オレは誠さんの事忘れたくなんてねぇから… 忘れる気なんて、ねえよ?」 「…へぇ?じゃー何しにここに来た?…それだけ言いに来たのかよ?」 月明かりで青白く照らされた顔からは、普段の幼さが身を潜めている。 マサトは唇を釣り上げる。 「…オメーには無理だって言いに来た」 オレはゆっくりマサトに近づいて、その体をドアと自分の体で挟みこむ。 「へー…わざわざソレ言いに来たのかよ。…無理かどうか試してみるか?」 オレはマサトを見下ろして言った。 身じろぎもせずにオレを見返していたマサトは、再び唇を釣り上げる。 「…試してみろよ?」 それが強がりだと、オレには分かる。 コイツはオレが近づくと、緊張して密かに体を強ばらせる。 今だってそうだろ?内心では落ち着かずソワソワしてる。 そのくせオレを挑発してくる。 「本当は…誠さんにとらわれてんのは、テメーだろ…?」 「…フン、一緒にすんなよ」 「知ってんよ?テメーが誠さんに勝て無かった事…それで拘ってんだろ…」 「へぇ?…誰が言ってんだ?んなコト…上等…」 いい加減この挑発的な口を塞いでやりたい。 「んなの見てりゃ分か…ん…」 最後の言葉は口の中で聞いた。 見てりゃ分かる、ってオマエがいつ、オレの事見てたよ? 誠の事で一杯のその頭で、片手間にオレの事考えてんじゃねえ。 …今なら、オレの事で一杯一杯だろ? 誠の事考えてる余裕なんて、ねえだろ? そんな感じに、これからずっとしてやるよ。 「…う…ん…」 何も考えられないくらいに、強く、激しく。 思い通りにマサトの唇をむさぼって、ようやく開放する。 ぼんやりしていたマサトは、やっとそれに気付いて視線を上げ、オレを見る。 また思い出したかのように眉をよせる。 「…」 その濡れた唇を開いて、言葉を探す。 「…こんなんじゃ、全、然…」 足りねえよ? 出て来た言葉は強がりなのか本心なのか。 どちらにしてもその口で、オレを挑発する。 「もっとか?」 そう聞いたオレの唇に、ゆっくりと自分からその唇を重ねて来る。 「…もっと…」 唇が触れる寸前で、甘い吐息と共にそう言った。 ――こんなんじゃ、全然、足りねえよ…? マサトの潤んだ瞳が訴える。 オレは黙ってポケットから鍵を取出し、鍵穴に差し込む。 カチリ、と音を立てて扉を開ける。 マサトの腕を掴んで玄関に引き入れ、その勢いで室内へと繋がる廊下に引き倒す。 「…ッ」 さすがにどこかぶつけたであろうマサトが眉をひそめる。 「……」 マサトは、自分の上に覆いかぶさって見下ろしているオレの事を、ただぼんやりと見上げていた。 オレは首筋に舌を這わせ、同時に上着の裾から素肌に侵入する。 「ん…ぁ…」 今更になって、逃げようとずり上がる体を押さえつける。 廊下の固い床の上で。 半分は無理やりに。 半分は合意の上で。 マサトへの欲望も誠へのイラツキも。 ひっくるめて混ぜて、全部、ぶつけた。 ☆★☆★ 攻めな龍也がおりますけど……。 この話は確か2月くらいに書いたんですよ。んで、その後ほったらかしに…(笑) で、読み返してみると、今となっては書けない感じの攻めな龍也でした。 書き直そうと思ってたけど、「ダメ!書き直したら絶対リューヤがヘタレる!!」と急遽そのままです(笑) ほんと、数ヶ月でエライ変わりようです、自分。 (だって今、ヘタレた感じのリューヤ妄想が……!!) あ、そして次はエロなので、ご注意ください。 (この龍マーは体育倉庫エロが書きたいがために始まったので、基本はエロなんですよ〜実は/笑) (2004.4.30) 戻る |