拳を自分のものでない血で染めて、オレはキヨシと時貞の方へと向かう。
もちろん、問題なく全員をぶちのめした。
「ヒロシ…なんで…」
「何でもクソも…てめえ、…昨日オレを裸に剥いた事を忘れたとは言わせねえぜ!」
「……」
時貞が無事で、まあ、その…良かった。
そして時貞の無事なツラを見た途端、今朝のムカつきを思い出した。
「昨日、オレに何した、コラァ!!」
「……言ってもいいのか?」
「…オマエ〜〜……言えねえ様な事したんじゃねえだろなっ!タダじゃおかねー…ってオイ、
キヨシ何すんだよ!」
殴ろうとしたオレの腕を押さえるキヨシに不満の目を向ける。
「やめろって!これ以上殴ったら、いっくらコイツでも頭オカシクなんべ?」
「…もう頭はおかしーだろっ!」
「…ぷっ…ふふっ…アハハ…!!」
「てめー時貞っ!何笑ってやがんだよ!!」
「ふふ、ヒロシ、人前でンな事聞くなよ?恥ずかしいヤツだな」
「ああ!?恥ずかしいのはテメーだろがっ!恥ずかしーような事、人にすんじゃねえよっ!!」
「おい、だからやめろって!!おめーらはっ」
オレは助け出した時貞と今にも喧嘩しそうなる。
それを挑発するように、楽しそうにからかう時貞。
「ったく、もう…たまんねーよ」
やれやれ、つきあってらんねえ…とキヨシが呆れた風に言い、ため息をつくのが聞こえた。
ったく。
キヨシ、オメーも…時貞が悪いと思うだろ??




病院には行かないと駄々をこねる時貞を、オレ達は天羽の館に運んだ。
「ほれよ」
無造作に時貞を担いでやって来た俺達を、執事の桧原が青い顔で出迎える。
「こ、これは…!時貞さま…」
オレ達の方を見て、何事かと問いかける。
「……ヒロシさま、キヨシさま、何故このような事に…」
しかし、時貞がこのように血だらけになって帰ってくるのは珍しい事ではない。
「オメーも何とか言ってやれよ?このバカに…」
オレは日頃時貞の心配をしているこの執事の桧原に同情の視線を向ける。
「そんな…私ごときが時貞さまに意見するなど…」
桧原は大きなため息をつく。
オレとキヨシは時貞を部屋まで運ぶのを手伝い、桧原が傷の手当をする様子を見ていた。
「なんかよー、腕折るとかなんとか言ってたっけー…デージョブか?ソレ?」
キヨシが桧原に時貞の腕の具合を聞く。
「私も詳しい事は分かりませんが…骨折はしてないようです…」
「心配症だな……キヨシは?」
茶化すように時貞が言うのでオレはゴツンと時貞を頭を殴ってやる。
「いってェ……」
「ヒロシさま、キヨシさま、いつも時貞さまを…ありがとうございます」
そうだ、桧原。オマエはよく分かってる!
それに反して…時貞、オマエはもっと反省しろ。



桧原の手によって、あちこちに包帯を巻かれた時貞。
まるで包帯が上着かのように、上半身は裸だ。
その包帯の巻かれようを見ていると、よっぽど酷くやられたみたいだ。
そもそもコイツ、弱くはねえクセに、注意が足りないというか、
結構不意打ちを食らってやられたりする。
血だらけになって帰ってくる時貞に、実際、桧原も気が気じゃないだろう。
だけど、コイツの場合、心配するだけ無駄。
いくら心配した所で、コイツはそんな他人の心情は理解してないのだから。


時貞の部屋で、オレは時貞と二人、キヨシの帰りを待っていた。
腹を減らしたキヨシは、桧原がメシを作るというのを待ちきれず厨房に乱入しているところだ。


「オレが、オマエの寝てる間、何してたか教えてやろうか…?」
「…いらね」
時貞がオレに寄って来て、思わせぶりに言う。
「まあ、聞け」
「…聞きたくねえ」
「まあまあ」
「いらねえって!」
オレはちょっと時貞の話を聞くのが怖かった。
何したか言えとは言ったが、実は聞きたくない…という気もしている。
だって、知らねー間にコイツと一線超えてました、とかシャレになんねー。
それは、オレの男としての沽券に関わる。
「ふふ、何も寝こけて意識ないヤツとヤっても面白くねえからオマエの想像してるような事はしてねえって」


「淋しいからよ、こーやって…イタズラしてた」


時貞はオレに乗っかってオレの鎖骨の下を舐めた。
「ほら、これ、実は昨日オレがつけてやったんだぜ。オマエ寝てたから知らねえだろうけど」
「知らねえよ」
いつの間にこんなモンを…!!
オレの鎖骨の下には内出血の跡が。
今の今までそんな事知らなかったオレは、時貞がつけたらしいキスマークを見てギョッとする。
「…オマエが他のヤツの前で裸になった時用の嫌がらせに」
あ、でも彼女もいねーから必要なかったかな…とクスリと笑う。
「あと、もっぺんオレがオマエを裸にした時にオレのつけたやつがあったら嬉しいだろ?」
「…誰が」
「オレが」


あっそう……。
安心した。とり合えず、何も(?)なくて。
「でもおかげで今日、オマエが来てくれたし…」


「嬉しかったぜ」
そう言って、時貞はオレの唇をゆっくりと舐めた。


あっ何しやがる…と思ってる間に。
……オレはいつも時貞に好き放題されてる事実に、また腹が立ってきた。


だけど、……今は時貞の自由にさせてやった。
時貞が、言葉通り本当に嬉しそうに笑っていたから。




これもキヨシが帰ってくるまでのサービス……だぜ?
……大サービスもいいとこだ。


















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天羽くんのピンチに助けに来てくれるヒロシってのが書きたかった。
単行本14巻で天羽のピンチに現れるヒロキヨはホントにカッコイイ。
その後のヒロシと天羽の素直じゃねーんだから!っていうやりとりにも超萌えます。
天羽くんは強いんだけど、結構その辺の名も無いキャラに大勢でやられたりするので、
普通に色々やられてるイメージがあるよ…?(笑)
おかげでヒロキヨは何しても大丈夫って感じだけど、天羽くんは結構儚いイメージが…!

で、姑息な感じの悪者出現。
天羽くんは、呼び出しに応じて行ってみると、いきなり後ろからボコボコにされるという展開です。
のこのこと呼び出しに応じる天羽くん。

ヒロシは結局天羽くんの事ほっとけないの。気になるの。好きなの!(笑)
天羽くんは気まぐれな人なので、色々やっても(何を…)その後のフォローは無さそうで…
で、ヒロシがまたキレる訳ですよ。

桧原は博識で傷の手当もお手の物です。
レントゲンも撮らずして骨折の有無も分かるらしい…(笑)

そして、最後は幸せ風味に…(??)


(2006/12/13)
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