冬。
真里にとって誠が死んでから、初めて迎える新年。 周りは新しい年への期待で賑やかだが、真里の心は全く晴れなかった。 秋生に強引に初詣に連れ出された真里だったが、周りの賑わいを一層悲しく思った。 結局、秋生と別れてから、トボトボとこの場所に来てしまった。 その事故現場には、未だ花が途切れる事はない。 誰かが置いていった、花束やタバコを見ると、受け入れたくない現実を思い知らされる。 真里は、その場所にしゃがみ込んで、じっと、誠との時間を思い出していた。 はらはらと、白い雪が舞う中。 何時間も、ずっとそうしていた。 そんな気はないのに。もう泣くのにも飽きたのに。 何故だか涙は溢れてくる。 冷え切った体に、自分の涙だけが現実感を持っていた。 ガロロロロロロ・・・・・・ ……聞き覚えのある排気音。 その爆音が自分の方へと近づいてくる。 ―――この音…リューヤ…? 自分の前で停車する単車。 「マサト…」 真里に気付いた龍也は、ゆっくりと単車から降りる。 真里は立ち上がり、涙も拭かずにその眼差しで龍也を睨み返す。 絶対、コイツから目を逸らしたくないから。 ―――コイツは何で単車を降りないのか。 ―――誠さんの死はコイツにはどうでもいい事なのか。 ―――「新しい族」…その神経がどうしても分からない。許せない。 誠が死んで、悲しみに暮れる爆音小僧6代目。 6代目頭の夏生は単車を降りた。 その時、龍也は言ったのだ。 ―――誠が死のーが…そんなのはカンケーねー。俺は俺のしたいようにする。 何故だか分からない怒りで、気付けば龍也を殴りつけていた。 龍也に殴り返されながら、泣きたくなった。 その時の2人の喧嘩は、慌てて止めに入った6代目のおかげでそれ以上のものにはならなかった。 しかし、それからと言うもの、真里は龍也の事を憎んでいた。 龍也が何も言わずに近づいてくる。 ここで、あんトキの続き、してやろーか…? 真里は、動かずにその場でただ、龍也のことを睨みつけていた。 腕が伸ばされ、冷えた頬を包みこむように、両手で頬を掴まれる。 その力が強かったので、真里は身動きを取る事もできず、 そして、思いがけず龍也に唇を塞がれる。 「……ッ?!」 あまりの事にあっけに取られた真里は、ただ、龍也を見返す事しか出来なかった。 何をするのか、と思う以前に。 その口付けが、驚くほどに激しくて。 無遠慮に進入して来た舌が、己の口内を滅茶苦茶に蹂躙する。 逃げ場を探してさまよう舌は、強引に龍也のソレに絡め取られる。 「…ンッ…は…ッ」 何が何だか分からなくなって、頭がグラグラして。 何故だか足元が危うくて。 押しのけようと伸ばした手は、そのまま龍也の上着を握り締め、しがみ付くような格好になってしまっ た。 ただ、龍也の触れた所は全部熱くて、そこに神経が集中する。 白い吐息と共に、やっと龍也の唇が離れた。 「…ぁ…」 真里が息を整え、言葉を紡ぎ出す前に、龍也がキッパリとした口調で告げる。 「誠はもう死んだ」 何を言うのかと、真里は訝しむ様に龍也を睨みつける。 「いつまでも、死んだヤツに囚われてんじゃねーよ?!」 ただ、そう言い残して龍也は去った。 重低音の排気音を冷たい冬の空に残して。 さらには真里にどうしようもない違和感を残して。 冷え切った体の中で、龍也の触れた唇だけが熱かった。 未だにグラグラする頭で、龍也の行った方向に目をやる。 動悸が速い。 指先が震えているのは、寒さのせいだけでは無いはずだ。 どうしよう。 何かが変だ。 囚われてるって何だよ? そもそも、アイツは何しにここに来たんだよ…? 龍也の言った言葉を反芻する。 ――……じゃあ、オマエはいったい何しに来たっていうんだよ?! ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― >いつまでも誠さんのことが忘れられない真里が、可愛さ余って憎さ百倍、みたいな。 ↑コレ、メールで頂いた染井さんのコメント。そして最後の龍也の言葉も。 (は!勝手に出して良かったですか?スイマセン) いや、でもそんな感じでいきたいべ〜と思いまして…。 で、とうとう龍マーを始めてしまいましたよ!! 何となく、季節は正月です。マー坊は悲しい新年を迎えます。 時系列としては夏:爆音小僧6代目とスオーくんが走ってるのをアッちゃんと見てます。 秋:誠さん、事故で他界。 爆音小僧6代目解散。龍也、新チーム結成。 冬:この話。誠さんの事、思って悲しくなってるマー坊。 という具合に。どうやら、龍也はマー坊が誠さんの事考えてるとムカツクみたいですヨ?(笑) はっ!!しかしながら、横浜って雪降るんですかね?! うちは普通に降るんですがね…。 (2003.11.23) 戻る |