冬。2









誠が死んで。

爆音小僧6代目は解散した。

そして俺は新しいチーム、朧童幽霊を結成した。





俺は誠の事、好きじゃなかった。

色んな意味で、アイツの事は好きになれなかった。

走りでアイツには敵わなかった。あんな旧車にも関わらず…。

そしてアイツはマサトの心を独占していた。それにもイラついた。







いつまでも、誠の事を思ってメソメソしているマサト。

マサトは誠に懐いていた。

懐いていたと言うより、誠の事が好きだったのだと思う。

俺には分かる。

そんな事、マサトを見てれば分かるから。



…そんなマサトを見ているとイライラする。

俺の事を殴りつけてきた時の、あの涙が忘れられない。

俺の事を憎んでる。

アイツは俺が誠の「死」を重く受け止めてないと思って悔しいんだ。

ガキだから。

誰もが誠の死を泣いて悲しむと思ってる。

俺は誠の事を好きではなかった。

だが、それはまた別のことだ。

死は死だ。

それを理想化しようが美化しようが、それは勝手だ。

しかし俺とは関係ないと思う。俺が走りを止める理由にはならない。

俺は誠の死を「死」として受け入れる。

それ以上でも以下でもないのだ。

ただ、誠が「死んだ」という事だけが事実だ。

……それの何が悪い?







そんな俺に激しい怒りと憎しみをぶつけてくるマサト。

それがどんな感情にせよ、激しい思いをぶつけられる事自体、俺には心地が良い。

……もっと来いよ。俺のトコに。

あの憎しみを込めて睨みつける瞳が。

真っ直ぐに自分を見ていることに興奮する。

誠の事なんか考えてないで、ずっとそうやって俺の事だけ見てろよ。

そして。

あの憎しみを込めて睨み付けて来る瞳を。

別のモノにしてやりたくて。











そこは誠の事故現場。

誠のこと、嫌いだったが、花をそえるくらいの気持ちはあるから。

新年早々、通りかかったついでに来てみたら。

雪がはらはらと舞う、暗い路上で。

アイツは1人しゃがみ込んでて。

あのバカヤローは一体何してんだ。

自分でもよく分からない、怒りの様なものがこみ上げて来て。

俺は、マサトの唇を無理やりこじ開けて、容赦なく口内を犯す。

ずっと、こうしてやりたかった。

ただ、きっかけが無かっただけ。

己の舌で激しく口内をかき回すと、マサトは嫌悪の喘ぎを上げる。

俺は、それさえも奪う。

必死に俺から逃れようとしているマサト。

その必死な様子がまた俺の嗜虐心を煽る。



その瞳を見下ろすと、いつもの憎しみと。

驚き、不安、疑問、嫌悪……そしてある種の恍惚。

俺はそれを見逃さない。

いつもとは別の光を認めて、とりあえず俺は満足する。



しかし今まで泣いていたであろう、涙を溜めた瞳を見て思う。

そうやって、誠のために涙を流すのが気に入らねんだよ……。

いくら泣いても、もう誠は帰ってこねーよ。

……誠はもう、死んじまったんだからよ。

いつまでもそうやって泣いてるんなら、いっそ俺が泣かしてやろーか。

俺が、泣かしてやりたい。

しつこく誠に拘るコイツを。







その涙を、いつか別のモンに変えてやろうか?

俺が。



























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始めの自分の予測に反して龍→マーな感じですね…。
どうしっちゃたんだろう?いや、私はマー坊が愛されてる方がいいですけど…。
さらに自分の予測に反して話は進まず、まだ冬です。
それにしても…よく分からないなー龍也って!(←オイ!)
なんかドライな人に…いいじゃないかよ!泣かせてやってよ〜…(笑)


(2003.11.28)
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