いくら邪魔が入ろうとも(仮)













終業式もとっくに終わった午後。

クリスマスやら冬休みに入る期待やらで、周りはいつもよりも騒がしく落ち着かない。

しかし、何時の間にか教室には秋生と真里の二人だけになっていて。

何故だかイイ雰囲気になってしまった二人で。

危うく互いの唇が触れる寸前で。

「ジュンジ〜〜!!」って言いながらカズが現れなかったら、

そのままめくるめく二人の世界に突入する所で。

「アッちゃん、あ、マー坊くんも…ジュンジの奴知らねェ?

アイツ送ってくれとか言っときながらいねーのよ…」

「あ?…さあ?」

微妙な二人の空気に全く気づかないカズはもちろん鈍感な部類の人で。

「…アッちゃ〜ん…帰ろっか」

ため息をついて立ち上がる真里。

えー、もー帰っちまうの?ジュンジ見つけるまで待っててくれよ〜、と言うカズを置いて教室を後にす
る。

そのまま家に帰るのもアレなので、適当に流して辿り着いたのはいつものB突。





「もーだいぶ寒みーよな〜」

ぼんやりと赤く染まった雲を見ていた真里は、くるりと秋生に振り返って言う。

強い西日が眩しくて、逆光になった真里の顔をまともに見れない。

そのまま秋生の横にやってきて、腰掛ける。

「アッちゃんー…」

ぴったりと横にくっついて秋生を見上げる。

少し寒いから。くっつくのはとても自然で。

秋生は真里の肩に腕を伸ばして、自分の方へと引き寄せる。

そして、そのまま顔を近づけ唇を寄せていく。

「…ん」

冷えた唇に熱い舌の感触が心地良い。

真里は秋生の背にそっと手をやって、制服にしがみつく。

「…マー坊」

秋生の唇が首筋に降りてくる。

学ランのボタンを外して普段は晒されていない所にまで舌を這わせる。

「あ、…アッちゃん、ダメだよ…こんなトコでー…」

外気に晒された襟元に鳥肌が立つのは寒さのせい…だけじゃない。







――ガォロロロロロロッ

重低音の煩いカワサキが近づいてくる。

『…ん?』

この音…?!

二人は体を離し、身構える。

その単車が自分たちの目前で停車した事に気づいて顔を上げる。

「拓ちゃんしらねー?!」

「しらねーよ!」

真里は邪魔されて気が立っているので既にケンカ腰で言い返す。

現れたのは、何故かヒロシとキヨシ。

いつものように、二人乗りだ。

どおして、コイツらが?というか、邪魔すんな、と二人を睨みつける真里。

真里的には、この二人に対して「ケンカしてーんなら、上等だよ…?」と思っている。

むしろ「強えーんだって?…ふうん…オレとどっちが?」と興味がある。

しかし、共通の友達である拓がいるため、まだケンカはしていない。

……でもそんなもの、コトが始まってしまえば関係なくなる。

マー坊の襟元が乱れているのに気付くキヨシ。

「何だヨ、イイトコだったからって怒んなヨ〜?!」

ニヤニヤして真里をからかう。

「ああ〜?!ウルセエよ?!」

真里は言いながら襟元を慌てて直した。

頬を染めながらもキヨシと顔をつき合わせて、今にもケンカしそうだ。





「……で、何で拓探してんだよ?」

そんな真里とキヨシを置いといて。

ふ〜、とタバコを吸いながら冷静にヒロシに問う秋生。

「拓ちゃんって家帰ったんじゃねーのォ?」

真里が口を挟む。

「それがよォ…」

「オレら待ち合わせしてたんだけどよォ」

「一時間過ぎても来ねーのよ、拓ちゃん…」

「もしかよ〜、また何かに巻き込まれてんじゃねー…?」

心配そうなヒロシ&キヨシ。

「えーっ?!心配だなー…拓ちゃん…」

真里もいつものように心・配!を顔に張り付かせる。

「しょうがねェな……」

秋生はタバコを足元に投げてもみ消す。

「探し行くべ…?」

「うん!」

『オウヨ!!』

そして何だか不思議な取り合わせではあるが、ヒロシ&キヨシと共に拓を探すことに。









すっかり日が暮れ、夜。

元町でヤンキーに絡まれていた拓を救出し、(風神雷神と爆音7代目がタッグを組んで現れたとあっ


はそれだけで戦意を喪失するというものだが、拓に絡んだ不幸なヤンキー小僧はしっかりヒロシに締


られていた。)「これからクリスマス会だべ!?」とか言いながら嬉しそうなヒロシ達と拓が一緒にどこ


に行ったのを見届け、(「マー坊くん達も一緒に…」という拓の申し出を断って)やっと秋生のウチに帰


てきた。

とっぷりと日が暮れた中を走り回っていたので寒かった。

「アイツらさー…クリスマス会って…なんかおもしろくねー?」

秋生の部屋で、凍えた手をストーブに翳していた真里は、上着を片付けている秋生を振り返って笑
う。

「オメーも行きたかったんかよ?」

くす、と笑って秋生はベットに腰を降ろす。

「えー…別に…オレアッちゃんといる方がイイもん」

そう言って、真里は秋生の横にやってくる。



「アッちゃん…オレェ…もー我慢できねーよぉ…」

真里は甘えるようにそう言って、秋生に唇を寄せてくる。

今日はイイとこで邪魔が入りまくる日だった。

「……オレも」





「ヨォー…」

ガラリと部屋の戸が開いて夏生が顔を出す。

しかし目前の光景に夏生はそのまま固まる。

真里をベットに押し倒して、胸元に顔を埋めている秋生。

そんな秋生の頭を抱きかかえている真里。

『あ……』

入り口に立つ夏生に気付いてベットの上の2人も固まる。

『……』

石化した3人の間に気まずい沈黙が流れる。

「あー…ワリィ…」

一番に石化から回復した夏生が、そう言って自分の開けた戸を元のように閉める。

「…ケーキあるからよ?食いたきゃ食えよ…」

部屋の外からそう言い残して。





「……」

何事も無かったかのように、行為を続行しようとする秋生なのだが。

分かってんべ、オメーの考えてる事…。

明らかに、先ほどに比べて落ち着かない真里。何だかソワソワしているのが秋生には分かる。

次に真里が言い出す言葉が予測出来て、少しやさぐれた気持ちになる。

「…アッちゃ〜ん…ケーキ、…食いたい」

「……」

やっぱり!!

自分の予測が正確過ぎて嫌になってくる秋生。

だってよぉ…そりゃー無ーべ?

今日は散々邪魔が入って…もー我慢出来ねーってオメーも…。

もちろん、そりゃ、オレもで。

……今さらお預けはねーだろ?!

てゆーか、アニキ……ヒデーべ…。

「…ケーキ、食いてーッ」

いくらオレが嫌だと言ったところで。

真里の心は既にオレよりケーキに向いているのは明らかで。

くッ…ケーキに負けてる自分が…悲しすぎ…。

秋生は(半ばやけくそで)フッと笑いながら溜息をついて、真里の上から体を退ける。

「行くか…」

「うん!」

そそくさと上着の乱れを直し、大急ぎで台所へ向かう真里。

未練がましくベットの上でため息を一つ。

そうして、秋生は真里の後を追い、台所へ向かうのだった。







バタバタと台所にやってきた2人。

(オ〜…早えーじゃねーかよ…?)

テレビを見ながらタバコを吹かしていた夏生はチラリと秋生を見る。

(…アニキ…早えーも何もよ…)

秋生もタバコを取り出して、深い息を吐く。

(……誰のせーよ…?)

肩を竦めて、はしゃぐ真里に目をやる。

「ねーっ!二人とも何落ちついてんの?!早く食おーよォ!」

待ちきれない〜と真里。

(ワリーって…マジでよ〜…)

夏生は秋生には詫びを入れ、真里に苦笑しながら、包丁と皿を取るために立ち上がる。









「美味い☆」

ケーキを口にし、幸せそうにニッコリと笑う真里。

何と言っても本日はクリスマス。

幸せならそれでいいだろ。

こうして3人、ケーキを食ってるのも…まーほのぼのして幸せだ。

秋生は幸せそうにケーキを頬張る真里を見ながら、そう思うことにした。

まあ、何というか真里の幸せな顔が大好きなのだ自分は。

そんな真里を見ていると何だか嬉しい。

それに別に焦らなくても。……夜は長い事だし。

























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何故だか色んな人々に邪魔される2人なのでした…。
いや、ラブのアッちゃんならあそこ(夏生さん出現)はそのままヤっちゃうだろ、とか思います(笑)
しかし、微妙にギャグになってまして、この話。
ちょっと日常のアッちゃんが混ざってるようなカンジで…あんな調子に。
人間の欲求は睡眠欲>食欲>性欲の順に強いのでしたっけ。
まー、そういう事なんで、しょうがないか(笑)
ちなみに真嶋「男前」兄弟は心話ができます(笑)もちろん夏生さんも攻めの人で!!
さらに、ヒロキヨ出て来ましたね…。めっちゃ好きです。
キヨシが暴れてるヒロシ見ながらふ〜って感じが好きです。
もっとマー坊と絡んで欲しかったですよ。原作で。そしたらヒロキヨ×マーってのもあるいは…(笑)

ああ、結局、クリスマスっぽいSSは書けませんでしたーッ!!

色々とお世話になった染井さんに捧げますvv(第一弾)


(2003.12.23)
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