絡み酒














ここは真嶋商会。

どういう訳か、今夜は飲み会である。





「ンだよォ〜…オレの酒が飲めねェってのォ?!」

いつものガレージにマー坊の声が響き渡る。

すでに出来上がってしまっているマー坊が酒の入った容器を持って、龍也に迫っている。

その場にいたのは、マー坊と龍也、そして秋生。

夏生と誠は酒の補充。そして須王はつまみを買い足しに出ていた。

「オイッ!!コイツなんとかしろよ!」

ほんとしょうがねーなァ…と思いながら、見守っていた秋生は龍也に怒鳴られて、

「オイ、マー坊、そんなモンにしとけよ…」

龍也に助け舟を出してやる。

マー坊は酒に弱い。飲んだら飲まれるタイプである。

いつもの無邪気に傍若無人なのが、さらに増長されるのだ。

そして大体において、迷惑を被るのは周囲の人間だったりする。

「ム〜…アッちゃん…リューヤの味方すんだァ?」

マー坊はアルコールで頬を染め、さらに面白くない、という顔で秋生を振り返る。

「味方とかゆー問題じゃねーべ?リューヤも嫌がってんだろ」

「オレはぁ…リューヤに飲ませたいのー!!」

「オレはメーワクなんだよッ!もーどっか行けよ!」

結構必死めでマー坊を阻止している龍也。

「もうッアッちゃん!押さえて!」

「エッ?!オレ?」

「そう!!」

「何でオレが……」

「……この前さー…、オレ、すげー眠いっつってんのにィ、アッちゃんがしたいっつーから、

 ゆーこと聞いてやったトキあったじゃん?もー忘れたん?あん時、オレの言うこと何でも聞くっつって
たー!!」

「…ンな事覚えてんのかよ?!」

「オレは酔っ払ってる時の事は忘れてても、眠い時の事は覚えてんのvv」

「…っつー訳だ、リューヤ…ワリーな…」

そう言って、背後から龍也を羽交い絞めにしてマー坊を手伝う秋生。

「テメェ…秋生。ちっと尻に敷かれすぎじゃねーのか?情けなくねーのか?!」

呆れた顔で秋生に毒づくしかない龍也。

「…ほっとけよ」

秋生だって不本意だがしょうがない。

本気で呆れ顔な龍也からは目を逸らすしかない。

「さ〜リューヤー!!これでもう逃げられないよ〜!!」

酔っ払いの満面の笑みでマー坊が迫ってくる。

そしてタチの悪いことに、その後本人は記憶に無いのだ……。





「やめろって!!つーか、アキオ、テメーもイイ加減にしろよ?!どっちかっつーと、

 こいつを止めんのがオメーの役目だろが?!手伝ってどーすんだよ!!」

「何言ってんのリューヤ〜、アッちゃんはオレの言う事聞くモンだろ〜?」

……という認識があるようだ。マー坊的に。

秋生はガックリ。(でも事実だったり…)

「リューヤ…オメーも、もう諦めろよ…?」

もうすっかりマー坊に対して色々と諦めている秋生。

そんなんでイイのか、という気もするが……。

「コレ…きっと美味いヨ…?」

「きっとって、…オメー飲んでねーだろッ?!」

マー坊が手にしているのは、もちろん、マー坊が調合した謎の酒。

見た目、某テニスマンガの汁職人の作り出す「青酢」みたいな感じ。青いし。

そして何だかアルコールに混じって激甘な匂いと鼻をつく酸っぱい匂いがする。

「何混ぜてきたんだよ!匂いからしてマズそーなモン作んなよ!」

「ンなコトねーってェ…せっかくいっしょーけんめー作ったんだからァ〜」

「マー坊、何入れたんだよ?」

「え〜台所にあったやつテキトーにィ…」

秋生が考えるに、青い色はかき氷シロップ(ブルーハワイ)。

酸っぱい匂いは酢というところか。

「ンなモンぜってー飲まねーからな。」

「ヤダ!せっかく作ったのに〜」

「じゃあアキオに飲ませろよ?!」

「エッオレ?」

いきなり矛先が自分に向いて少し慌てる秋生。

「やだ〜ッオレはリューヤに飲ませたい!」

そもそもどうして、こんなにリューヤに飲ませたいんだ?マー坊は…。

この龍也に対する執着にちょっぴり嫉妬する秋生。

「だってさぁ…アッちゃんに飲ましたら…かわいそうじゃん?」

「…マー坊……」

微妙に秋マーな発言に救われる秋生。

「それにさ〜…、オレたまにはリューヤにギャフンと言わせたいモン〜」

満面の笑みを浮かべて龍也に告げる。

「リューヤの泣いてるトコ見てみたい〜〜vv」

……どうやらマー坊はこの謎の調合酒で龍也を泣かす気でいるらしい。

ニヤリ…と嬉しそうに龍也微笑かけるマー坊であった。



「もうッ、そんなに暴れたらこぼれるだろ〜ッ?!…もうこうなったら、口移しで飲ませちゃうよ?!」

「や!やめろって!!」

もちろんの事、龍也はマー坊から逃れようともがいていた。

しかし後ろから秋生に押さえられている為にうまい事行かない。

マー坊は息を止めて、青酢を口に含む(息を止めねばならないらしい)。

「ん〜」

「まてッ!!」

マー坊の顔が近づいてくる。

やばい。このままではッ……。

「…よせッ…」

マー坊に両手で後頭部を捕まれ、顔をそむける事さえ出来ない!!

このままでは…口移しでムリヤリ飲まされてしまう!!

それはもう、とっても不本意。

何が嫌かって、もう何か色々嫌である。

そもそも、その変な酒はマズそうな上に体に悪そうなので絶対飲みたくないし!

さらに、やめろって言ってんのに強引に迫ってくるマー坊にもムカツクし!

さらにこんな身動き取れなくされて、ヤバイし!

本当に本気でやめろっつってんのにッ!!

ってゆーか、口移し?!

何でそこまでされなきゃならねーんだッ?!

龍也は焦りまくる。

「テ、テメー、マサトッ!!」

口で言っても聞かない事は百も承知である。

しかし言わずにおれない。

「やめろっつってんだろッ!!」

もちろん、幾ら叫んでもマー坊が言う事聞く筈が無い。

もう、マー坊の唇が龍也のそれにあと数センチの所まで迫ってきた。

ヤバイッ!!

やられる!!(何を?…チューを…?)

そう思って観念の眼を閉じた龍也であった……!!







「何してんだマー坊?」

そこに現れたのは夏生。と誠。

酒を持って帰ってきた。

「ん?」

マー坊は夏生に呼ばれて振り返った拍子に、口の中の酒をゴクリと飲み込む。

「〜〜〜………!!」

……その場に声も無く倒れこむマー坊。

うっかり自分で飲んでしまって撃沈。

「う…マズ…ゲホッ…」

「た、助かった…」

本気の冷や汗を拭う龍也。

「で、何やってんだ?オメーら…」

「別に……」

秋生は何事もなかったかのように、龍也を開放する。

「オイ、デージョブか?マー坊…?」

「…アッちゃん……」

涙目で、腕を伸ばして秋生にすがりつくマー坊。

自分で作っときながら、だいぶこたえたらしい。

「ううう…」

「オイ?」

「ウエ…気持ちワリィ……吐く…うう〜」

「!!ちっと待て!」

「ウッ…」

「オイ、マー坊、ココで吐くな?!もーちょい我慢しろ?!」

大慌てでマー坊を担ぎ上げ、洗面所に向かう秋生なのであった。

果たして間に合うのか……。









「はあ…助かった…」

ホッとため息をつく龍也。

現れた夏生と誠に心の中で感謝する。

「リューヤ、オメー…涙目になってんぜ?どーしたんだヨ?」

クスリと笑いながら言う夏生に、赤面するしかない龍也。

「イヤ、これは別に…///」

自分を取り繕うので一杯一杯になっている龍也を見て、コイツ何か可愛いなぁ…と思う夏生なのであ
った。

「あ!!ホント、リューヤ涙目じゃん?!」

誠まで龍也をしげしげと観察しだす有様。

「うるせェな」

誰が涙目だーッと心の中では激しく否定しながらも、平静を取り繕うのに一杯な龍也。

『とりあえず、今はオレに構うなヨ』状態。

夏生はそんな龍也の様子を察知して、誠に囁く。

「オイ、も〜ほっとけよ?あんま構われたくねーみたいだぜ?」

「そなの?」

その様子を耳の端で捕らえた龍也。

確かに構われたくねーけど。

アンタの弟も一枚噛んでんだぜ?

何か無責任!!

よく分からないイラツキを夏生に向けていた。

……もっと心配して欲しい。

とか思ったのかは龍也本人にも良く分からない。

























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とりあえず、マー坊とアッちゃんで迫ってみました〜。
秋マー前提です。その上で龍也に迫ってみました〜☆(何が何やら…)
ああ、でもあんまり嫌がる龍也が上手い事書けませんでした(笑)
どちらかというと、ムリヤリなマー坊を書くのを楽しんだフシがあり…。ハハハ。
そして須王くんは帰って来なかった…(笑)

 この嫌がる龍也ってのは、この前灰二さんに書いてもらったSS(「行きたいね」)
 を読んでたら、こうムラムラ…とね(笑)
 マー坊とアッちゃんを絡めたい…とか思って来てしまいまして。
 そんな訳で嫌がる龍也に迫り隊の隊長はやっぱり灰二さんだと思います(笑)
 隊長、とりあえず、こんなモンできました!(笑)


(2004.5.8)
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