キズとキス
帰り道、急な雨に降られて、びしょ濡れ。 帰宅と同時に、二人して慌しく風呂へ駆け込む。 雨に濡れて冷えた体に、熱いお湯を順番にかける。 真里はふと秋生の腹に目を遣ると、まだ新しい傷を見つける。 「あ、これ…」 先日、裏をかいてきた魍魎の連中に、一人ずつ的にかけられた爆音。 ボコられたミツオを保健室に運んできた秋生もまた、その標的だった。 一人でミツオを運んで来た秋生を、魍魎の連中は待ち伏せしていた。 エージ以外は返り討ちにした秋生だったが、道具を出してきたエージに苦戦していた。 真里が保健室の扉を開けた時、目に飛び込んできたのは、 エージにナイフを突き立てられる秋生。 エージが秋生にナイフを突き刺そうと突進して行く光景を、スローモーションのように見ていた。 ただ、呆然と見ている事しか出来なかった。 秋生が刺されたと思い、全身の血の気が引いた。 真里は膝をついて、じっと、傷の様子を観察する。 ナイフによって掠められた傷。 外側の皮を掠めただけで、深い傷ではない。 ……これですんで良かった。 この程度の怪我で済んでホッとする。 あの時、真里は秋生が刺されたと思って、声が出ないほど怖かった。 しかし、実際はナイフは秋生の腹の皮一枚を掠めただけにとどまった。 ……ごめん、アッちゃん。 オレの敵である武丸、魍魎はアッちゃんの敵にもなってしまった。 自分が血まみれになるのは平気だけれど、自分の大切な人が血まみれになるのは怖い。 チロリ、とその傷に舌を這わせてみる。 ―――血の味がする。 秋生は大人しく、真里の好きにさせていた。 「……マー坊」 「ん?」 「しみる」 「うん」 だけど、やめない。 チロチロと傷の具合を確かめるように、舌を這わせる。 「……オイ、」 「ん?」 真剣な表情で傷を探る真里に苦笑しながら、自分の腹の所にある真里の頭に触れる。 額に張り付いた前髪をかきあげて、真里の髪に指を絡める。 「どーせ舐めんなら、もっと下…」 先ほどから、際どい所を変に刺激されている秋生は、嫌でも体に熱が集まる。 ようやく傷から離れた真里は笑いながら立ち上がる。 「…アッちゃんのバカ」 「ああ?」 今まで腹の傷を探っていた舌が、今度は軽く唇に触れる。 「すげー、心配した」 少し咎めるような表情でそう告げる真里。 「オレはよ、マー坊。決めてんだよ?」 「なに」 「マー坊の敵はオレが倒してやる、ってよ」 「……うん」 「もー、心配させる事なんてしねーよ」 「うん」 「それに分かったべ?いつものオレの心配が」 「……オレはナイフで刺されたりはしてねーし…」 反論しようとした唇は秋生に塞がれる。 「ん」 ―――血の味がする。 自分の血の味のする舌が欲しくて、秋生は真里の頭を引き寄せた。 自分が血を流すのは真里のため。 昔から、そういう事になってる。 そう、決めてる。 だからコレは正しい傷だ。 「……で、コレはどーしてくれんだよ…?」 情けない顔をしている秋生に、視線を下半身へと促される。 真里は秋生と視線を合わせて、悪戯っぽく笑った。 ☆チイには珍しく(笑)原作からのネタ。 ↑いや、どうも私の書く話って原作を忘れてるんじゃないかと思うくらいの原作っぽさが無いと思う 今日この頃(笑) 別にお風呂でイチャイチャしてるのが書きたかったと言う訳ではなく。たぶん。(笑) (でもあんまりイチャイチャしなかった…くっそ〜・笑) マー坊は傷とかあると、つい弄ってしまうんではないかと思います。 あ、もちろん、帰宅した家はアッちゃんチです。 で、この後アッちゃんはマー坊にしら〜と「ダメ、のぼせっから〜」と無邪気に言われるのか。 それとも「も〜アッちゃん…」と困った顔で言いつつも何とかしてもらえるのか。 どっちでしょうか(笑) (2003.10.16) 戻る |