☆名前/染井さん
−−−−−−−−−− 夜半。墨色の空に半分欠けた白い月が浮かんでいる。 とあるマンションの、とある一室にて。 事後の気だるい雰囲気が漂う中、広いベッドの上に、二つの白い影が重なるように横たわっている。 ひとつは、窓の向うに見える欠けた月をぼんやりと見上げながら。 もうひとつは、隣の影を愛おしそうに見つめて。 ふいに、月を映したままの冷たい瞳が細められ、囁くように息を吐く。 「土屋ァ…」 「何すか、…緋咲さん」 「そーいや、お前の『名前』、聞いたことなかったなァ…? ま、こんなことになっちまってから聞くのも何だけどヨ?」 「………」 「教えてくれよ? お前の『名前』」 「そ、それは…」 「ん? どしたよ?」 「………」 「俺にも言えないことなのかヨ…?」 「………ッ」 「………(ムカッ)」 「す…」 「す?」 「す、すいません! 俺も知らないんです!!」 「…………あ?(ぽかん)」 一瞬、滅多に拝めない間の抜けた顔をした緋咲を、土屋は見ることができなかった。 その額を白いシーツの上に擦り付けるようにして――いわゆる土下座の格好で――いたからだ。 「信じてもらえないかもしれませんが、俺、物心ついたときから『土屋』って呼ばれていて。 自分でも、情けない話なんですけど、それしか記憶になくて……すいません!!」 「………」 「………」 「………」 「か…緋咲、さん…?」 無言の空気が流れる中、そろそろと顔を上げる土屋。 月の影になって、緋咲の表情はよく見えない、けれど。 「……ふぅん。あほらし。 もォいーよ、オメーはよォ。一生『土屋』って呼んでやっからよ〜!?」 さっきまでのいい雰囲気はどこへやら。 追いかけようとする土屋の腕を、猫のような身軽さですり抜ける緋咲。 ベットから降りると、さっさと服を着はじめてしまう。 月明かりだけが頼りの、薄闇の中でも、土屋の目にはわかる。 それは室内用のではなく、外出用のだ。 「えっ? ちょっ…か、か、か、緋咲さん!? こんな時間にどこ行くんすか!?」 「ダチんとこに遊び」 すでに着替えを済ませている緋咲。 上着を羽織ると同時に、颯爽と寝室から出て行ってしまう。 土屋はまだ立てない状態らしい。攻なのに。(笑) 「ちょっ、まっ、か、緋咲さーん!!」 土屋の叫びも空しく、無情にも玄関のドアが閉まる音が響き渡る。 間。 月明かりすら届かない夜の底。 閉まった玄関のドアに背中を預けるように持たせかけ、通路に座り込む影がひとつ。 ジョーカーを燻らせながら、緋咲は降ろしたままの髪を気だるげに掻き揚げる。 『名前』なんか本当は、どうでもよかったのだ。ただ…。 「(つーか、いーかげん俺のコト、『名前』で呼ぶのに慣れろヨな……あほ『土屋』)」 煙と共に吐き出した苦い想いは、闇に溶けて消えた。 らぶらぶEND…?(違う気もするが) −−−−−−−−−− どうやら土緋で『名前』ネタを書きたかったらしいですよ…。 ★☆★☆ (チイ) 本ー当に、土屋の名前は永遠のナゾ!! しかし、どうですか。緋咲さんを名前で呼ぶ土屋って、「なんか生意気…」って思ってしまいませんか?(笑) ↑ホント、土屋っていったい… そしてなんだかラブラブな感じのこのお話…vv 何だか土←緋を感じる!! しかし今、同じようなネタで書くと、寸止めくらって泣く土屋になるらしいですよ!(笑) それも愛。愛ですよ。 (…土緋はそういう愛で良いと思いマス…笑) (2004.8.20) 戻る |