☆名前/染井さん





二人の関係は、新婚になる一歩手前の同棲の段階で。(つまりこれは過去話?)
一応、役割的には、緋咲さんが旦那で、土屋が奥さん。
でも奥さんが攻。しかもへタレ攻。だけど料理上手で買い物上手。家事も上手い。ある意味特技だ。(笑)
実は結構謎が多い人物でもある。緋咲さんの前だとどこまでもへタレだけどね…。
必然的に旦那さんが受。でも男前。怖いくらいに男前。謎の会社に勤めている。もちろん会社ではスーツ。
なのに一人でネクタイが結べない(土屋に出会う前は毎朝違う女性に結んでもらってたとか)。
同じ職場の隣の部署に大嫌いな奴がいる。顔を見るたび大喧嘩。ある意味ライバル。(笑)
家計は緋咲さんが支えている。かなり稼ぎもいいらしい。
が、金銭感覚はまるでゼロ。時折とんでもなく高価なもの(消費物限定)を買って来ては、土屋を驚かせている。
よって生活食費雑費関係の財布は、土屋が預かっているらしい。
当然ながら表札は「緋咲」。
もともと緋咲さんが一人暮らしのところに土屋が転がり込んだというか拾われたという設定。
相賀も後から仲間入りする予定。

そんな設定を踏まえた上で、以下の小話というか会話文を読んでもらえると、わかりやすいと思います。
ま、踏まえなくても読めるんですけどね。(笑)
足りない描写は各自の想像で補ってください。(駄目じゃん…)


−−−−−−−−−−

夜半。墨色の空に半分欠けた白い月が浮かんでいる。

とあるマンションの、とある一室にて。

事後の気だるい雰囲気が漂う中、広いベッドの上に、二つの白い影が重なるように横たわっている。

ひとつは、窓の向うに見える欠けた月をぼんやりと見上げながら。

もうひとつは、隣の影を愛おしそうに見つめて。

ふいに、月を映したままの冷たい瞳が細められ、囁くように息を吐く。


「土屋ァ…」

「何すか、…緋咲さん」

「そーいや、お前の『名前』、聞いたことなかったなァ…?

 ま、こんなことになっちまってから聞くのも何だけどヨ?」

「………」

「教えてくれよ? お前の『名前』」

「そ、それは…」

「ん? どしたよ?」

「………」

「俺にも言えないことなのかヨ…?」

「………ッ」

「………(ムカッ)」

「す…」

「す?」

「す、すいません! 俺も知らないんです!!」

「…………あ?(ぽかん)」

一瞬、滅多に拝めない間の抜けた顔をした緋咲を、土屋は見ることができなかった。

その額を白いシーツの上に擦り付けるようにして――いわゆる土下座の格好で――いたからだ。

「信じてもらえないかもしれませんが、俺、物心ついたときから『土屋』って呼ばれていて。

 自分でも、情けない話なんですけど、それしか記憶になくて……すいません!!」

「………」

「………」

「………」

「か…緋咲、さん…?」

無言の空気が流れる中、そろそろと顔を上げる土屋。

月の影になって、緋咲の表情はよく見えない、けれど。



「……ふぅん。あほらし。

 もォいーよ、オメーはよォ。一生『土屋』って呼んでやっからよ〜!?」



さっきまでのいい雰囲気はどこへやら。

追いかけようとする土屋の腕を、猫のような身軽さですり抜ける緋咲。

ベットから降りると、さっさと服を着はじめてしまう。

月明かりだけが頼りの、薄闇の中でも、土屋の目にはわかる。

それは室内用のではなく、外出用のだ。



「えっ? ちょっ…か、か、か、緋咲さん!? こんな時間にどこ行くんすか!?」

「ダチんとこに遊び」



すでに着替えを済ませている緋咲。

上着を羽織ると同時に、颯爽と寝室から出て行ってしまう。

土屋はまだ立てない状態らしい。攻なのに。(笑)

「ちょっ、まっ、か、緋咲さーん!!」


土屋の叫びも空しく、無情にも玄関のドアが閉まる音が響き渡る。





間。





月明かりすら届かない夜の底。

閉まった玄関のドアに背中を預けるように持たせかけ、通路に座り込む影がひとつ。

ジョーカーを燻らせながら、緋咲は降ろしたままの髪を気だるげに掻き揚げる。


『名前』なんか本当は、どうでもよかったのだ。ただ…。


「(つーか、いーかげん俺のコト、『名前』で呼ぶのに慣れろヨな……あほ『土屋』)」


煙と共に吐き出した苦い想いは、闇に溶けて消えた。






らぶらぶEND…?(違う気もするが)



−−−−−−−−−−
どうやら土緋で『名前』ネタを書きたかったらしいですよ…。











★☆★☆
(チイ)
本ー当に、土屋の名前は永遠のナゾ!!
しかし、どうですか。緋咲さんを名前で呼ぶ土屋って、「なんか生意気…」って思ってしまいませんか?(笑)
↑ホント、土屋っていったい…
そしてなんだかラブラブな感じのこのお話…vv 何だか土←緋を感じる!!
しかし今、同じようなネタで書くと、寸止めくらって泣く土屋になるらしいですよ!(笑)
それも愛。愛ですよ。
(…土緋はそういう愛で良いと思いマス…笑)


(2004.8.20)
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