視線で殺して











「アンタ、また男に色目使ってたでしょ……?」

もちろん土屋は酔っている。

「……んん?」

酔っ払って、うとうととしていた最中、重苦しくて目を開けてみれば目と鼻の距離に土屋。

「何だよ、重てーな…ヒトの上に乗るんじゃねえよっ!」

緋咲は自分の上に跨って不穏な空気を纏っている土屋に当然の抗議をした。

「オレの話聞いてます…?」

しかし土屋はイマイチ緋咲の言葉を聞いていない。

目が据わってる。

不満全開の表情で緋咲に詰め寄る。

「な、何だよ!」

緋咲とした事が、少しばかり……土屋ごときに引いてしまった。

「だから、アンタ…今日も外道のヤツらを誘うような目で見たでしょ?!」

「……」

何を言ってんの?コイツは。そもそも何で怒ってんの…。

確かに、今日、外道とかち合って…一触即発、喧嘩上等、

むしろ秀人の野郎をボコボコにしてやりたかったが、

始める前に交機の追尾がかかっていたので、おちおち喧嘩もしてられなかったのだ。

で、チームはそのまま流れ解散で、その後飲むやつは飲んでた…

というのが今の状況なワケなのだが。

「確かに喧嘩、誘ってたけどよ、文句あんのかよ?」

「ケンカ…いや、あれは、男を誘う目だった。色目だった!」

はーーー?!

「誰がいつ誘ってるよーな目で見てたって?」

そもそも誰を誘うんだ、オレが!

アホか。

緋咲は容赦なくその冷たい視線で、土屋を睨み付けた。

緋咲のガンつけで、竦み上がらない者はあんまりいない。

「……くっ」

案の定、土屋は緋咲から視線を逸らし、ガックリと頭を垂れた。

「…すげー…、…腰にキタ…」

「あ?」

ガバっと顔を上げた土屋は何やらさっきよりも必死な様子だ。

酔っ払って赤かった顔も、益々赤い。

「だからっ、アンタのその目が、すげークルっつーの!!」

「はあっ?!」

「そーゆー目で…」

ってゆーか、何でオレ、こいつに怒鳴られなきゃなんねーの…

この…コイツの必死な感じは何なんだ。いったい。

「見られるとっ」



ガバッ



チュウ〜〜☆

「〜〜〜ッ!!」」

思い余った土屋は緋咲の唇に自分のそれを押し付けた。

!!!

何しやがんだ!!コイツはっ!!

緋咲は躊躇うことなく、力いっぱい土屋を殴りつけた。



ドガーーーーーーッッ

「〜〜〜〜〜っってェ…」

強かに壁に打ち付けられた土屋だが、フルフルと頭を振って緋咲を見る。

「何するんすか!!」

それはこっちのセリフっ…!!

「オレがどんな目で誰見よーが勝手だろが!」

「オレが、我慢ならねえーー!!」

「訳が分かんねーよ!」

「そーゆう目で見てもいいのはオレだけっ!オレだけにしといて!!」

「っつーか、そーゆーキモイ事言うのはテメーだけだ!

テメーが何かおかしいんだろ!!」

「アンタ、そーゆー聞き分けのねえ事言ってたら…」

…誰が聞き分けがねえだと?!

「いつかアブねー目にあっても知らねーからっ!!」

「アブねーのはオマエだっ!!」

ドカッ!!

詰め寄ってきた土屋のこめかみに緋咲は容赦無い一撃を食らわすのだった。





+++++++



翌日。

「何か、朝起きたら頭いてーんすよ…」

「飲みすぎじゃねぇのかよ」

「何か、昨日、オレ緋咲さんに…何かいいました…?」

「何かって何だよ?」

「さあ…それが分かんねーんすけど。…微妙に機嫌悪くねーっすか?」

「別に?あんまり寄るな。キモイ」

「…キモイって何すかっ?!…酷でえ…」

釈然としない様子で首を傾げる土屋。

そして昨日の土屋がちょっぴり怖かったので、あまり追及したくない緋咲であった。


















___________________________________
土屋ほど緋咲マニアになれば、緋咲さんの視線一つでドキドキ興奮できます。

それも「堪らん」な風にドキドキできます(痛い…笑)
で、酔っ払い土屋は怖いもん無しなので、迫ります。
さらに独占欲丸出しです。オマエ、何様だ!な土屋。
土屋がとても理不尽でバカなので、緋咲さんは気の毒なかんじで。


(2004.9.18)
戻る