天使か子悪魔1
今日はマー坊と一緒に海岸線を流す。 気づけば横須賀。 マー坊が海で遊ぶって言うから、単車を止めて砂浜へ。 ズボンを膝までまくりあげ、まだ冷たいであろう海水に素足をつけて、パシャパシャと遊ぶマー坊。 何が楽しいのか、と思うけどオレは黙って見守ってる。 だって、見るからに楽しそうだから。 そんなマー坊を見てるのが好きだから。 地元じゃ無いって事は、オレらを知らない奴もいるということで。 俺たちの単車と、さらにオレらを見て、喧嘩売ってくる輩もいる。 オレらの単車が2台そろって並んでるのに、それでもオレらに喧嘩売ってくるっつーのは バカで不幸としか言いようがない。 それが、明らかに弱そうなヤンキー小僧なら、なおさら。 結果は目に見えてる。 「ふうん…オメーら、ケンカしてーんだ…?」 マー坊は喧嘩っ早いので、もちろん売られた喧嘩は買う。 売られてなくても買うけど。 そもそも暴れるのが好きだから。 唇をツゥ…と持ち上げて嬉しそうに微笑む。 マー坊がその気になってるので別に止めない。 特に止める理由もねえし。 だって、無理だろ。コイツらじゃ。 マー坊がバカ強ェって事はオレが一番知ってるから。 たぶん、コイツらじゃ、マー坊にかすりもできねーんじゃねえの。 そう思って、オレは事の次第を見守っている。 どっからその力が出てくんのかしらねーけど、マー坊はすげー破壊力を持っている。 一見、ちっこくて、細くて華奢で……可愛くて。 だいたいの奴は騙される。 オレも、今でもたまに騙されてる。 でもその実きっちり筋肉で、本当に華奢なわけでもない…ってのをオレは実際として知っている。 だからって、あの強さは、まあ…普通に考えて納得いかねーけど。 でも、もう慣れた。 オレだって、マー坊と本気で喧嘩したら勝てねーと思うし。 まあ、マー坊と本気で喧嘩することなんてねーけど。 今さら、喧嘩する事とかねえし…それに今さらマー坊の事、殴ったりできっか? できねえよなぁ…。 マー坊は嬉々として、売られた喧嘩を消化していく。 自分たちの予測が外れた事にようやく気づいた不幸なヤンキー小僧を、容赦なく打ちのめす。 「ああ、ナニ?コイツら…ヨエーなぁ…」 3人を軽々と沈めて、つまらなさそうにオレの方に顔を向ける。 そんな事言われてもよ? オレにどーしろっつーの。 返り血がその不満げな頬を伝ってる。 「もの足りねえよ〜〜」 つまらない、とオレに不満顔。 一見、その可愛らしい外見から天使っぽいけど。 その実、逆じゃねーのか、と思うときも多々あったり。 「な〜…退屈…」 かまってくれよ、とオレに身をすり寄せる。 マー坊の頬についた返り血を拭ってやる。 「血ィついてる?」 「ああ」 「…洗ってこよ。アッちゃんも行こう?」 そう言って、オレの腕を掴んで、再び波打ち際へ走るマー坊。 オレは、靴脱いでもいねーのに。濡れんだろ。 そう思ってたら、途中でマー坊が手を離したので、靴のまま水に入る事は免れた。 でも、マー坊が待ってるので、しょーがなくオレも靴を脱いで、ズボンを捲り上げる。 「おっ」 水に入ると思ったよりもひんやりしてて、鳥肌が立ちそうだ。 「しょっぱい!」 海水で顔を洗って、プルプルと頭を振るマー坊。 「海の水ってー、なんかビックリするくらい辛いよな…」 ポトポトと前髪や顎のラインから水が滴る。 マー坊の唇についた水滴をすくうように舐めてみる。 「な?」 「ああ…あんま飲んだら体にワリーべ。塩分取り過ぎ」 「アッちゃん、主婦みたい」 「…そっかァ…?」 最近、妙に所帯染みた言動を取ってしまうのは何ゆえか。 やたら生活じみてるだの面倒見が良いだのとは言われるけれど。 それは半分以上、今までマー坊と一緒にいたからじゃないだろうか。 ホントに。 オレ、マー坊の世話とかフォローとか好きみたいだから。 ポリポリと頭を掻いて、水から出ようとしたオレをマー坊は捕まえる。 「あ、待ってよ、ちゃんとしてよ」 「…だって、オメー塩かれーんだもんよ…」 ホントは、まあどうでもいいんだけど。 「甘いのと辛いのと、どっち好き?」 「……別にどっちでも」 マー坊はオレの首に腕を絡めて、ニッと微笑む。 「…だろ?そー言うと思った。じゃ、今日は辛いオレをあげる」 普段はどちらかというと甘口だから。たまには辛口でも。 「誰かに見られるべ」 「いーじゃん、別に」 オレたちは、一面開けた見通しのよい波打ち際で、堂々とくっついてた。 当たり前のように抱き合って、唇を寄せ合った。 ……ホント、誰かに見られたらどーすんだべ? 恥ずかしいべ。 だけど、頭と体は、別行動。 そんなモン。 ホント、どーしようもねェ。 ☆★☆★ 若いから、そんなモン?(シナライヨ!/笑) 秋マーはもう、いつでもどこでもラブラブで困ります。 恥ずかしい人らだなァ…。いやいや、それでこそ秋マー!!(…?) そんなこんなで、チビなアッちゃん×マー坊の喧嘩偏が書きたいです。 二人の出会いを捏造したいです。ふふ、します(笑) (2004.4.29) 戻る |