天使の隠し事
神奈川県横浜市にある、とある車体修理屋。 真嶋商会には、今日も鮮やかな真紅のフォアが止まっていた。 そしてその二階、次男坊である俺・真嶋秋生の部屋には今日も、見慣れた男が転がり込んでいた。 「アッちゃ〜ん!あーそーぼっ♪」 明るい呼び声を発しながら、彼は俺の背後から抱き着いて来る。 彼・鮎川真里は、俺の自宅の超常連客だ。 俺の所属するチーム・爆音小僧の七代目頭である彼。 その容姿は色白で小柄、それに童顔だ。 色素の薄い瞳ははっきりと大きく、長い睫に縁取られている。 とてもじゃないが、『ヤンキーのにいちゃん』には見えないこの外見・・・ そのせいで、何も知らない男からはナメられて絡まれたり、 酷い時は女に間違われてたりするんだが、コイツが『か弱い』なんてのはとんでもない。 喧嘩のウデは超一流、一度キレたら取り返しの付かない程の暴走振りを発揮する。 勿論、走り屋チームである爆音小僧の頭で有る真里は、単車のウデも素晴らしい。 俺は結構自信の有る方なんだけど、真里のウデには敵わないと思っている。 真里の棲む速度・・・それはもう、別世界だ。 でも、普段は・・・まぁ、こんな感じだ。 俺のごつい背中から細い両腕を絡ませ、甘えてくるこの仕草。 昔は心臓が破裂しそうに驚かされたが、今となってはもう日常的な行為だ。 むしろ真里の柔らかい金髪が、ふわりと頬に触れるのがくすぐったくて、そっちの方が気になる。 はっきり言って可愛らしい容姿の真里と反して、俺はどっからどうみても『ヤンキーのにいちゃん』な外見だと 思う。 長身にガッチリとした筋肉質の身体、自慢のトサカ頭は派手な二色染め。 面長の顔に、切れ長の目、細い眉。 睨んでるつもりは無いんだが、ちらりと視線を向けただけで、相手は必要以上に萎縮してたりする。 俺もそんなに大人しい方じゃ無いし、それはそれで仕方無いっちゃぁそうなんだ けど、どっちかっつうと見かけに反して凶暴な真里の方がセコい気がするぜ。 ふわりとした金髪からは、いつもの整髪剤の香りがする。 こいつは、一回抱きついたら、なかなか離れようとしないんだよな・・・。 いつもはまぁ、それも黙認してるんだけど、今日はそう言う訳には行かない。 俺は、未だしがみ付いたまま離れようとしない真里に言った。 「だから、コレ作ってからだって言ったべ?」 俺の手には、爆音小僧のメンバーである姫小路良の愛車のパーツが握られている。 先週から調子がおかしいと騒いでいた良の単車を見た所、どうやらコレが原因だったらしい。 俺は良の単車を預かって、今日中には仕上げてやる、と約束したんだが・・・。 「え〜〜!又リョーちゃん単車壊したのぉお!?」 「だから壊したんじゃ無くて、単にコイツの具合が悪かっただけで・・・」 俺が言い終わる前に、真里はこう続ける。 「や〜だ〜あ!そんなの今度で良いじゃ〜ん!俺と遊ぼぉよおっ!」 「ダーメだって。リョーと約束したしな。後もうちっとで終わるし、お前はゲームでもしてな」 「むううう〜〜!」 真里は俺のつれない返答に、不機嫌に頬を膨らますと、こう言った。 「もぅいい!アッちゃんのバカ!知らない!」 絡ませていた腕をさっと放すと、バタバタと部屋を出て行った。 「おっおい!マー坊!!」 俺は慌てて立ち上がり、そう呼びかけたが、もう真里は階段を駆け下りていた。 相変わらず、ワガママなヤツ! この昔っからの自分中心の性格に、何度困らされた事か・・・。 追いかけようと思い、すぐさま立ち上がったが、少し考えて、もう一度腰を下ろした。 良の単車を早く直してあげたかったし、今追いかけていっても拗ねた真里は俺から逃げ回るばかりだろうし。 仕方無い・・・コレ直した頃には機嫌も少しは良くなってるかもしらねぇし、その後でお菓子でも用意して探し に行くか。 俺は再度マイナスドライバーを手にした。 一時間位が経った。 良のパーツはようやく完成した。 俺はそれを机に置くと、ジャケットを羽織り、外に出た。 真里を探しに。 フォアはガレージに置きっぱなしだし、そんなに遠くには行って無いだろう。 少し暗くなりかけた空を見上げ、傘を手に取る。 確か天気予報では、夕方から降り始めるとの話だったしな。 あのバカはどうせ、天気予報なんか見て無いだろう。 ずぶ濡れになって、アッちゃぁんん、と情けなく喚いている真里を想像して、俺は少し笑った。 自宅周辺を適当に歩き回ってる内に、ポツポツと雨が降り出した。 ヤッパ傘持ってきて正解だったぜ。 早く真里を探さなきゃ・・・何とかは風邪引かない、とか言うけど、寒い思いをさせたく無かった。 俺は傘を開くと、少し駆け出した。 ワガママ大王は、割と近くに居た。 時々皆でたまる、公園横の空き地だ。 だが、そこで何をしているのか、ちょこんとしゃがんでやがる。 全く、何やってんだか・・・。 「マー坊!」 俺の声に気付いた真里は、ふっと顔をこっちに向けた。 「アッちゃん・・・」 その顔は、何だか困った風に見えて・・・。 「?・・・何やってんだ、ホラ、帰るべ?」 俺は自分の傘を真里に差し出した。 が、真里は立ち上がろうとはせず、こう言った。 「どうしよう・・・お守り、無くしちゃった・・・」 「はぁ?お守りって・・・」 一体何? 真里は言う。 「アッちゃんのくれたお守り、ねぇの。オレ、ポケット穴開いてたみたいで、今気付いて」 真里はジャンパーの右ポケットに突っ込んでいた手を、その破れた穴から出して見せた。 俺は少し考えてから言った。 「あぁ〜、アレの事か!」 そうだ、今年の正月、一緒に初詣に行った時、真里に買ってやったヤツだ。 真里は大層気に入って、いつもポケットに入れてくれてた。 「どうしよう・・・」 雨はどんどん激しく降って来る。 俺は言った。 「仕方ねぇべ。取り合えず帰ろう?」 「いやだ!」 「風邪引いたらどうすんだ、ホラ」 俺は真里の腕を掴んだ。 「駄目だって!アレが無いと、俺・・・あん中に・・・」 「?つったってお前・・・ココで落としたかどうかも分からねぇんだろ?無理だべ」 雨も降ってて、暗い空き地から、あんな小さなモノを探すなんて。 それでも未だ動こうとしない真里を見ながら、俺はふと、気に成っていた事を口にした。 「マー坊・・・反対側も見たか?」 「?はんたい?」 きょとん、とした真里を見て、俺は確信を持った。 真里のジャンパーの左のポケットに、手を突っ込む。 何か布で出来た小さなモノの感触・・・俺はそれを掴むと、取り出した。 「お前・・・こっちに入ってるじゃん?」 「あ〜〜!あったぁあ!!!」 真里は瞳を見開くと、お守りを手に取り、一気に笑顔に変わった。 「良かった〜!見付かってぇ〜!」 そう言って、無邪気に喜ぶ。 全く、一本も二本も抜けてるぜ、マー坊。 でも、こんなに喜んで・・・。 俺もつられて穏やかな表情になる。 「さ、けぇるべ」 真里は大人しく頷いた。 「うん♪」 家に着く頃には、雨も少し穏やかになっていた。 だが、俺も真里もすっかり濡れ鼠だったので、二人共シャワーを浴びる事にした。 先に真里が入る事になった。 その間、良から電話が有った。 今日は今から京子と出掛けるから、単車は明日でも構わない、との事だった。 丁度良い。 雨も降ってるし、風呂に入った後で外出するのは少し面倒だし。 それにしてもアイツ、自分で単車壊しときながら、俺に修理させて自分は女とデートかよ? まぁ、いいんだけどな。 俺って本当、甘いよなぁ・・・。 俺は良との電話を終えると、キッチンでコーヒーを啜りながら、風呂場が空くのを待っていた。 と、テーブルに例のお守りが置いてあるのを見て、思った。 そう言えば・・・お守りの中に、何を入れてるっつうんだろう。 「・・・・・・・・・」 気に成る。 まぁどうせ下らないモノなんだろうけど。 ・・・見ちまうか。 俺は、お守りを手に取ると、中をそっと覗いた。 瞬間、背後から突然響くキャピキャピ声っ!! 「アッちゃ〜ん!お風呂空いたよ〜!」 俺はドキっとして、お守りを元の場所に置いた。 「お、おぉ!」 中身の確認は出来なかったが、仕方無い。 まぁいいか、後で本人に聞こう。 すっかりパジャマ姿になって、バスタオルで髪を拭う真里に少し微笑んでから、 俺は風呂場に入った。 雨に降られて冷えた身体も温まった。 俺は風呂場から出ると、適当に髪や身体を拭いてパジャマに着替え、タオルを首に掛けたまま自室に向か った。 真里は既に俺の部屋でTVゲームに興じていた。 「あ、アッちゃん、おあがり〜♪」 「オゥ」 振り向いた真里の身体を包んでいるのは、俺の家にしょっちゅう泊まりに来る真里が、自分で買ってきたパ ジャマ。 赤のチェック柄の上下に、白い肌と金髪がヤケに映える。 コイツ・・・こういうの着てたら、ホントに男なのか女なのか分からない感じだな。 ってのは、心の中でだけにしとく。 「そういえばぁ、リョーちゃんのパーツ、完成した?」 「あぁ。単車持ってくのは明日でいいとさ。京子と出掛けるらしい」 俺はベットに腰掛けると、煙草に火を付けた。 「ア〜ッちゃん!一本ちょーだい♪」 真里はそう言うと、自分の唇を指差した。 「珍しいな・・・ホラョ?」 俺は真里の唇に一本、煙草を咥えさせ、火を灯した。 真里はサンキュ♪と言うと、少しだけ眉を寄せながら、深く煙を吸い込んだ。 真里は基本的に煙草は吸わない。 中坊ん時は吸ってたけど、近頃では滅多に吸わない。 だから時々吸ってる姿を見ると、何だか昔を思い出して、懐かしい気分になる。 フーっと紫煙を吐き出しながら、真里は俺の隣に腰掛けた。 真里の体重を受けて、ベットが少し軋む。 深い意味は無い、少しの沈黙。 それを破ったのは、真里の謝罪の言葉だった。 「アッちゃん・・・ゴメンね」 「?何がよ」 その意味が分からずに、聞く。 すると真里は、少し赤い顔をして言った。 「俺・・・ワガママでぇ・・迷惑かけちゃったね」 あぁ〜、その事か。 何事かと一瞬不安になったんだが、ほっと胸を撫で降ろした。 「いーよ、慣れてるしな」 照れた様な顔をする真里にそう答えながら、長くなった煙草の灰を、ベットサイドの灰皿に落とす。 「お前はホント・・・なんつうか、ナ?」 そう言って、真里に笑い掛ける。 俺も本当・・・甘いし。 「エヘヘ・・・ごめぇん・・・」 真里は頭を掻きながら、照れ笑いをする。 「アッちゃんがぁ、俺、ほんとヘンなんだけどぉ、何かに夢中になってると、 ムショウに邪魔したくなっちゃうんだぁ」 「バッカ、それがワガママだっつうんだ」 「そうなんだけどぉ」 俺は真里の頭を軽く小突く。 「要はアレだろ?常に相手してくれなきゃタイクツだっつんだろ?」 「ううん・・・そうなんだけどぉ・・・」 認めてるし。 「全く・・・じゃあマー坊と一緒ん時は、俺は他の事考えれないべ」 「それで良いじゃん!」 「良くねーよ」 「・・・ダメェ?」 上目遣いに大きな瞳がねだる。 「バッカ・・・お前はホント、バカ!」 俺はそう言って、そっぽ向いてやった。 正直・・・ちょっと妙な気分になっていたのだった。 と言うか・・・昔から、真里にはヘンな気分にさせられる時が有って。 つまりはその、性的な対象として、捕らえてしまう時が有るのだ、男同士なのに。 好き・・・とか、思ってたりして。 そんな自分に嫌気が差しながらも、まぁいっか何て諦めたりして、ヘンなの。 お前もバカだけど、俺も相当なモノ。 て言うか、純粋なお前に比べて、俺の想いは邪だ。 特に、しかも、今日は、・・・俺、たまってる。 適当に付き合う女は、実は・・・まぁ居ない事は無いんだが、それも最近はご無沙汰で。 それにヤッパ、・・・好きな相手は、特別だ。 シャワーを浴びて直ぐの、石鹸の香りがする真里の身体を、やけに意識してしまう。 駄目だな、俺。 コイツの事を、ヘンな風に見てしまう自体、裏切りだよな。 複雑な想いに駆られている俺の気持ちを知りもしない真里は、ちょっと心配そうな声で言った。 「アッちゃん、ヤッパ怒ってるの?」 その表情は見えなかったけど、結構気にしてる時の口調だ。 「ちげーよ!怒ってなんか無い」 怒ってる訳じゃ無い。 寧ろ、俺自身に対して、呆れてる・・・。 「じゃあ何でこっち向かないの?」 「・・・ウルセーな。あっち行ってろ!」 「・・・・・・ヤダ」 真里の手が、俺の腕を掴む。 痛くは無いけど、感情が篭っている感じ。 あぁ、クラクラする・・・・。 チラっと、振り向いて見る。 真里はやはり、少し悲しげな瞳をして、下を向いていた。 伏せた睫はやっぱり長くて・・・。 今日は、日曜日。 兄である、夏生は外出している。 俺の中で、悪魔が囁く。 弱みを見せた隙を突け、と・・・。 ふいに零れた、打算的交渉。 「・・・キスさせてくれたら、許してやるよ」 考えていた事が、こんなに自然と口を付いて出た事に、俺は我ながらびっくりした。 「・・・キスって・・・アッちゃ・・・」 真里は大きな瞳を一層見開いて言った。 「駄目なんか?じゃあ許してやんない」 俺、相当意地が悪い。 でも、ココで引いてはいけない。 もう少し、様子見をしよう。 「えぇええ!で、でもぉ・・・」 言ってしまったモノは強い、俺は今、真里の紅い唇しか見えてない。 「マー坊、目、閉じてみ?」 「え・・・」 真里は言葉を詰まらせた。 ・・・勢いに任せてしまえ。 俺の中の悪魔が、更に囁く。 そうだ・・・こう言うのはタイミングが大事。 フォローは後、後! 短くなった煙草を灰皿に投げ入れ、俺は真里の手を掴むと、そのままゆっくりと押し倒した。 俺の下に有る真里の身体は、想像以上にちっちゃくて、それだけで俺は酷く興奮している。 多分、今迄で一番近くで、真里の顔を見てる。 幼い頃からずっと見てきた、整った顔立ち。 一体何時から? こんな風に、胸が締め付けられる程の感情を抱きながら、見つめ出したのは。 「俺・・・へ、ヘンなんだけどよ、マー坊見てると・・・なんつうか・・・」 その後は、言葉にならなかった。 俺は我慢出来ず、真里に口付けた。 真里は一瞬身体を竦めたが、抵抗はしなかった。 舌を入れたい衝動を押さえ、俺は言った。 「こうしたいって、ずっと思ってた・・・」 「・・・アッちゃん・・・」 何か言おうとする真里を遮って、俺は今有る想いをぶつける。 「俺、マジでマー坊が好きだ。ヘンだけどよ・・・ドキドキする」 「・・・アッちゃん、あのさ」 緊張で少し震える俺を見ながら、真里は、信じられない言葉を放った。 「あのさ・・・俺も、・・・ヘンだけど、大好きだよ」 そう言って、いつもの笑顔。 「・・・マー坊・・・」 「俺・・・ずっと気に成ってたんだけど、・・・でも」 更に続ける真里の言葉を、俺は黙って聞いていた。 「アッちゃん、ミキん事好きじゃん?」 ! 何でそこでミキが出る・・・。 「好きじゃねーよ!少なくとも、俺は何にも思っちゃいねー」 「そ、そうなの?」 真里の顔が明るくなる。 「おぉ。あのなぁ・・・お前以外の事、好きになった事はねーよ」 あああ・・・言ってて恥ずかしくなってくる。 何でコイツはこんなにニブイんだ?! フツー分かるべ? 爆音のヤツらは皆気付いてるってのに、当の真里はコレだもんな。 真里は喜びに頬を紅潮させながら俺の名を呼んだ。 「アッちゃあん・・・!」 「お前・・・本当に気付いて無かったのか?」 「う、うん・・・」 バカ・・・。 「だから、・・・あ、お前はどうなんだよ?」 「俺は、ずっとずっと好きだって言ってたじゃん?」 た、確かに・・・。 いっつも言ってた、アッちゃん大好き〜(ハート)!、って、ソウイウ意味だったんかよ。 何か不意打ち。 でも、・・・スゲェ嬉しいっっ! 「だから・・・ホントに大好きだよ・・・アッちゃん」 唇に、真里の唇が触れる。 それは柔らかくて、真里からってのが、又、スゲェ良くて。 俺は軽く触れてきたそれに、喰らい付く様に口付けを重ねた。 「ン・・・」 舌を割り込ませた瞬間、真里は小さく呻いたが、俺は構わず続けた。 どうして良いのか分からずにいる真里の舌を引きずり出す様に、何度も口腔を巡っていると、 真里の身体がびくりと揺れる。 「ンハァ・・・アッちゃ・・・」 「マー坊、舌出して・・・」 「ん・・・」 差し出された小さな舌は、震えていた。 俺はそれを貪る様に再度深く口付けた。 華奢な真里の身体を弄りながら、焦る様にパジャマのボタンを外して行く。 と、その行動の意味を悟ったのか、真里は俺の手を掴むとこう言った。 「アッちゃ・・・ダメ・・・」 「何で?」 「は・・・恥ずかしいよ・・・」 「今更だべ・・・」 俺は止めるつもりは無かった。 幾つかボタンを外し、上半身を肌蹴さす。 白い身体が、俺の目に眩しい。 俺は愛おしさを込めて、その上に手を滑らせる。 「あ・・・アッちゃん・・・」 胸元の紅い突起を探り、軽く刺激を与える。 「アッ・・・ん・・・だ、め・・・」 真里の頬が紅く染まる。 俺は片方の手でそれを続けながら、下半身にも手を伸ばした。 パジャマの上からでも分かる程、真里の中心は張り詰めていた。 勿論、俺自身もそうだ。 パジャマのズボンに手を掛ける。 緩いゴムのズボンは簡単にずれた。 「や・・・ぁ」 「嘘吐け・・・」 下着ごと一気にずらし、そのまま脱がせると、張り詰めた真里自身が露わになった。 俺は真里の耳元で囁く。 「コーフンしてんじゃん」 「や・・・っ」 そのまま耳朶を甘噛みする。 「ンァ・・・ハッ・・・っ」 「ヤラシーの、真里」 「ア・・・ン・・・」 真里、何て呼ぶの何年振りだっけ? 真里の羞恥を煽りたくって、敢えてそう呼んでみた。 案の定、真里は堅く瞳を閉じて、顔を反らした。 俺はゆっくりと、真里の中心を扱いた。 他人に触れられた事が無いのか、激しく快感を覚えた真里の身体は、 正しく苗字の如く、鮎の様に敏感に跳ねた。 「アァ・・・アッちゃ・・・はぁ・・・あんっ」 「あ、濡れて来た・・・」 「んんっ・・・やぁ・・・っハ・・・」 指先に絡む先走りを、わざと真里の顔に近づける。 「ほら・・・」 見てみろ? 「もぉ・・・アッちゃん・・・エロイよっ・・・!」 「バカ、こういう時はこれ位のが興奮すんだよ」 大サービスのつもりだぜ? 俺は再び下半身に手を伸ばした。 中心から零れ出た蜜は、最奥の蕾迄をも濡らしていた。 太股や、腰の辺りに、蜜の伝った跡が怪しく光る。 俺はそれを掬い取ると、そっと蕾に触れた。 「フアァ!・・・アッちゃッ・・・そこっ・・・?」 真里はかなり動揺した様子で言った。 勿論、ココに決まってるだろ。 俺は構わず、指先を少し入れた。 「大丈夫だって・・・こんなに濡れてるべ」 でも、ヤッパ狭いなぁ。 まぁ当然だけど。 「あぁ?!あ・・・っ・・・何か・・・?!」 恐らく今感じているのは、不気味な感触、なんだろうな。 キモチイイも何も、しょっぱなから分かる筈も無いだろう。 現にあんなにトロンとした顔付きから、少し青ざめた表情に変わっている。 成るべく苦しい思いはさせたく無い。 俺は慎重に、指を進めた。 「アッちゃ・・・ヤッ・・・怖いっ!」 真里は瞳に涙を浮かべている。 「大丈夫・・・俺を信じろよ?マー坊」 俺、ちょっとセコイなぁ。 でも、・・・ヤリたいし。 本当に、惚れてるし。 唯たまってるだけじゃ無い。 本当に好きだし、本当にしたい。 真里と、一つに繋がりたい。 俺は震える真里の唇に優しく口付た。 「ん・・・ふうぅ・・・」 少し緊張が緩んだ隙に、根元迄入り込んだ指を、ゆっくり鍵状に曲げた。 「んん!んっ・・・!」 内部で起きる動きに真里は身体を強張らせる。 俺はそれを解すべく、殊更深いキスを与えた。 そして、もう一本の指を挿入した。 「んんん!」 「大丈夫・・・直ぐに快くなるから」 「ぁ・・・っだ・・・メェ・・・」 二本に増えたそこは、さっきよりも圧力を増していて、俺の指は動き辛くなってる。 俺はどこかに在る真里の感じる部分を探ろうと、二本の指を動かした。 「ヤァッ・・・ヤッ・・・んあぁ・・・!」 真里は俺の両肩を掴んで、必死に引き離そうとしている。 だが、体勢が不利な事と、今自分がされている行為故、いつもの馬鹿力は発揮出来てない。 俺はびくともせず、真里のそこを解す行為を続ける。 「マー坊・・・集中して・・・イイ所・・・在る筈だから」 「アアン・・・っ・・・ヤァ・・・んな事いっても・・・ア・・・」 秘所からはクチュクチュと、卑猥な水音が聞こえる。 俺の指先がそこを探る度、真里の蜜が音を立てるのだ。 ここかも・・・と思った壁を、丁寧に擦って行く。 指先に、全神経を集中させて・・・。 「んっ・・・ふ・・・・・・・・・・!アァ・・?!」 真里の身体に変化が訪れる。 「?どうした・・・」 「アッちゃぁ・・・そ・・・こ・・・っ・・・!」 真里は縋る様な瞳で呟いた。 俺は今指先に在る場所に、グっと力を込めた。 「ココか?」 「んんんんっ・・・アハ・・・ハァア・・・っ・・・!」 先程とは一変、真里は俺の首に手を回して、どうしょうも無いと言った感じにしがみ付いて来た。 「ココか・・・ナルホドな・・・」 俺は暫くそこを中心に擦り続けた。 真里は快感に耐え切れず、高い声を挙げる。 「アァアっ・・・ハッあんっ!だぁ・・・めぇ・・・!」 「キモチイ・・・?」 そう問うと、こくこくと頷いて答えた。 真里をこんなに可愛いと思ったのは、これが初めてかも知れない。 本当に、欲しい、と思った。 十分に熟れたそこから指を抜き取ると、自分のパジャマを少しずらし、張り詰めた俺自身を引きずり出した。 相当、ヤバい。 こんなに堅くなってんの、超久しぶり。 先程迄俺の指先を咥えていたそこに、宛がう。 「マー坊・・・力抜いて」 俺はそれだけ言うと、真里の返答を待たず、一気に腰を進めた。 「あぁ――っ・・・!」 引き裂かれる思いがしたんだろう。 真里は悲鳴の様な声を出した。 それと共に強烈な締め付け。 こ・・・コレは・・・キツ過ぎて・・・正直、ツライ・・・。 「っ・・・マー坊・・・力・・・抜いて・・・!」 俺は優しく耳元で囁いた・・・つもりだったが、実際は途切れ途切れに零した感じの口調だった。 容赦の無い締め付けに、快楽等無い。 これでは、動くに動けない。 「ヤッ・・・イヤ・・・アァ・・・ァ・・・!」 真里はがくがくと震えながら、頭を振った。 恐らく強烈な痛みと、恐怖に陥っているのだろう。 だって、指二本の倍以上は有る、俺のが、経験の無い真里を犯しているのだから。 「ハァ・・・ヤ・・・ア・・・ッ・・・」 「マー坊・・・マー坊・・・」 耳元で優しく名前を呼びながら、萎えかけている中心を愛撫する。 少し、強張りが解れる。 俺はその拍子に、少し腰を動かした。 「ンァアッ!」 力が抜けた隙を見て、慎重に動く。 「マー坊・・・マー坊・・・」 「ふっ・・・く・・・ぁ・・・っ・・・!」 内部を掻き混ぜる強烈な痛みに、真里は助けを求める様に俺にしがみ付く。 瞳からはぼろぼろと涙が零れていた。 俺は少しでもその苦痛を和らげてあげたくて、瞼や頬、そして唇に、キスの雨を降らした。 「アッ・・・ちゃ・・・いた・・・ぁ・・」 「もう少し・・・我慢して・・・」 「ハ・・・ヤァ・・・」 動きを徐々に早める。 最初はキツ過ぎてそれ所では無かったが、今は程よい締め付けだ。 俺はそれを貪る様に、腰を打ち付けた。 「あっ・・・あぁ・・・っ・・・は・・・」 狂った様な俺自身が、真里の身体の中で蠢く。 それと同時に、暖かい口付と、甘い囁き、そして優しい愛撫を、俺は惜しみなく与えた。 やがて、何度も繰り返す波が、真里にとっても僅かに快楽に変化しかけていた。 「あっ・・・アッちゃん・・・っ・・・は・・・ぁ・・・」 ふと、目が合う。 幼く可愛らしかった真里の表情は、今や芳香な色香を感じさせる。 瞳からは絶えず涙が溢れて、頬を伝っていたが、それさえも妖艶に感じる。 ここ迄美しい者を、俺は見た事が無かった。 つぅ、と伝った涙を唇で受け止めると、真里の切ない涙の味が俺の舌に広がる。 「マー坊・・・・・・」 「んは・・・あ・・・や・・・っ・・・」 「俺だけのモンだ・・・真里」 「アッ・・・ちゃ・・ん・・・」 限界が近い。 俺は更に腰の速度を早める。 この快感の極みを、真里の中に放つ為。 「あぁっ・・・あっ・・・!・・・アアァ・・・っ」 真里自身も、今や堅く張り詰め、最後の開放を待ち望んでいた。 俺はそれを愛撫しながら、胸の花弁を甘噛みした。 「ンヤァっ・・・アハ・・・っ!」 「マー坊・・・もう・・・っ」 「ンンッ・・・っ・・・ああぁっ」 頭がクラクラする。 視界が狭まり、霧が掛かった様に見える。 快楽の放出が、来る。 「・・・っ・・・は・・・!」 身震いする様な快感を得ながら、俺は熱い液体を真里の中に放出した。 「ああぁっ!・・・あつっ・・・!」 俺の放った熱に、身震いする真里。 俺は少し力を込めて、先端を弄った。 真里の身体が大きく跳ねる。 「ふ・・・・ああああぁっ―――・・・・・・!!」 その瞬間、一際大きな声を上げながら、真里は白い快楽を放った。 そして、真里は糸が切れた様に、ふっと瞼を伏せた。 強い快楽の後に来る、深い眠りに落ちる様に―――――・・・・・・・。 ブラインド越しの眩しい日差しが、未だ眠っている俺の瞳を刺す。 俺はそれを感じて、鬱陶しげに寝返りを打った。 と、隣に誰かが眠っている・・・。 俺は驚き、ガバっと半身を起こした。 ・・・真里だ。 すやすやと寝息を立てている真里を見て、俺は昨夜の情事を思い出した。 そうだ・・・俺・・・昨日、コイツと寝たんだった。 俺が起きた事にも気付かずに眠りこけているその横顔に、俺はふっと微笑んだ。 「おはよう・・・マー坊」 そう言って、そっと頭を撫でる。 真里は未だ眠りから覚めなかった。 俺は朝の一服をしながら、ふと自分の身体に目をやる。 あの後、シャワーを浴びずに眠ったしな・・・フロでも入るか。 俺は一本だけ煙草を吸って、ベッドから降り、一階の風呂場に向かった。 シャワーを浴びて自室に戻ると、真里が目覚めていた。 ベッドの上で、いかにも寝起き、と言った顔をして座っている。 「あ、おはよ〜アッちゃん」 ぼんやりとした挨拶に、俺は笑顔で応えた。 「オゥ、オハヨ」 俺はソファに腰掛けて言った。 「マー坊もフロ入って来いよ、目ぇ覚めるべ」 「うん・・・」 真里は返事をすると、ベッドの上からじっと俺の顔を見つめた。 「・・・何よ?」 「えへへー、何でもねぇけど!アッちゃん見てると、楽しいんだぁ、俺ぇ♪」 全くコイツは・・・。 「そーかよ。お前はホント・・・何つぅかな」 ニコニコとする寝癖の付いた真里に近づく。 愛らしい顔を目前に、俺は愛しさが込み上げる。 ベッドに座ると、昨日の情事が頭を過ぎる。 だけど今は・・・目覚めのキスを。 軽く、唇に。 「おはよ、マー坊」 「ん、オハヨ」 目が合って、微笑む。 幸せな朝・・・多分、今迄で一番、最高の朝。 二人して笑顔、きっと真里もそう思ってると思う。 と、ふと昨夜の例の疑問が浮かぶ。 そうだった、アレを尋ねようと思ってたっけ。 「お前・・・そう言えばさ。あのお守りの中に、何入れてたんだ?」 「お守りぃ?」 「おぉ。何か大切なモン入れてるって言ってたじゃねーか」 「・・・あぁ〜!アレね♪えっへっへ〜、知りたいぃ?」 「何だよ・・・教えろよ」 俺がそう聞くと、真里はにっこりと笑いながら言った。 「お菓子の当たり券〜!やっと当たったんだよね〜、チョコバット!」 チョコバットって・・・それがそんな大切なモンなんかっ。 ヤッパ予感的中。 下らないモンだとは思ってたけど・・・まぁ価値観は人それぞれなんかな。 「お前・・・ソレの為にあの空き地で延々探してたってのか?」 「うんっ♪あ、でもぉ、ヤッパアッちゃんから貰ったヤツだからだよぉ?大事だしぃ、マジでぇ」 「そうか・・・まぁでも見付かって良かったナ?」 「うん♪アッちゃんが見付けてくれたもんねー!サンキュ、アッちゃん♪」 「オォ。お前の性格を良く理解してて良かったぜ」 そう言って、又二人して笑った。 笑顔。 眩しい、真里の笑顔。 心から愛おしい、金髪の天使。 ワガママ天使。 俺は相当、コイツにヤラれてるな・・・。 小さな身体が、元気に起き上がる。 真里はベッドから降りると、こう言った。 「じゃ、オレもフロ入ってくんねー!」 「オゥ」 真里はパタパタと、部屋を出た。 残された俺は、煙草を咥えると、灰皿を寄せた。 この中の一本、真里が昨夜ふかした一本。 中学の頃の真里の顔を思い浮かべる。 アッちゃん、と、笑う顔。 細くしなやかな身体。 高い声。 無邪気な仕草。 穏やかな口調。 そして、整った顔立ちに、甘い表情・・・。 それは、今も、昔も・・・。 「お前は本当、・・・可愛いナ・・・?」 最高の褒め言葉は、本人の前では口に出せず。 俺は一人、そう呟いた――――・・・・・・・・。 アッちゃん、ゴメンね? ウソついちゃってぇ・・・ あのね、・・・恥ずかしくって言えなかったんだけどぉ あのねぇ、お守りん中にはぁ・・・ アッちゃんの、写真、入れてるんだよ・・・。 アッちゃん、だーいすきっ! ***終わり*** ***後記*** 萌を押さえ切れず、もの凄く無理矢理なシチュで両思いを完成させてしまいましたぁ!! 何だか・・・コレ、本当にネット上に流れるんでしょうか??!! 私、刺されないでしょうか???!!! ま、まぁ、心優しいちぃさんなら、勇気を持って載せてくれる筈だぁ! と言う訳で・・・半ばムリヤリ、この作品はちぃさんに捧げます!!! 素晴らしき出会いの記念に、受け止めてやって下さい〜〜! 書かせて頂いて、本当に有難うございました☆☆ 2006.1.29 柚子 美京 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ (チイ) アッちゃんとマー坊の初めて物語(キャッ><)でした〜〜vv いやもう、アッちゃんが色々いいよう〜〜とドキドキしました! こうね、エロの時に余裕の無い感じのアッちゃんに興奮します。 そして、基本的にラブラブな秋マー万歳ー!!vv わ〜〜い!嬉しいな〜〜!! (私は常に人様の作品でサイトを盛り上げたいと目論んでいます…) ええ…もうゆずさん、ありがとうございます!ガッチリ受け取めたい///><(笑) よろしければまたお願いします!!(わくわく) (2006.02.05) 戻る |