約束。











天羽が死んだ。

それは何の前触れも無く。

多くの者の心に何かを残して。



アイツは考えた事があるだろうか。

自分が死んで、泣く奴がいる事を。

天羽の死。

アイツを少しでも知る奴は、少なからず何かを思った。

アイツは確かな存在感を持っていたから。

それは悲しみだったり、怒りであったり様々だけど。





オレは、誠さんの死を思い出す。

大好きで、特別な人だった。

今まで、そこにいるのが当たり前だった存在が、いきなり存在しなくなる。

今まであった存在が、そこに無い。

この喪失感はなんだろう……?

ポッカリと穴が開いたみてーに。

凄い違和感。

声も気配も温もりも、何も感じる事が出来なくなって。

どんなに強く思っても、どこからも何の反応も返ってこない。

もう、いないんだ。誠さんは。

もう、感じる事ができない場所へ行ってしまった。

確かなのは、今まで存在してた事。そして今、存在してない事。









今、オレの横にいるアッちゃん。

オレは横にいるアッちゃんを見る。

オレ達は単車を止め、歩道の植え込みに並んで一服してた。

触れている肩が温かくて、オレは無意味に安心する。

アッちゃんはぼんやりと、流れる車線に目をやりながら、タバコを吹かしてる。

車道から流れ込んでくるヘッドライトが、時折り強くその横顔を照らし出す。



……オレは絶対アッちゃんより先に死にたい。

勝手に決めてる。

だって、アッちゃんが死ぬトコなんて見たくない。

その後のアッちゃんがいない生活なんて耐えられない。

そういう事、想像するだけでもすげーイヤ。てか泣きそう。

オレの中で特別で大きな存在を占めるアッちゃんだから。

オレの生きてるうちは絶対アッちゃん死なさねえ。





横でぼんやりしてるアッちゃんに、そう、言ったら。

「オレぁ、オメー残して死んだりしねーべ?」

くす、と笑ってオレの頭を優しく撫でる。

アッちゃんの手。温かい。

この確かな温かみがオレを安心させる。

「ンだぁ?…どした?マー坊…」

アッちゃんの言う事は、オレとはまさに正反対。

こういうトコがアッちゃんだよなー、って思う。

オレは嬉しくなって思わず微笑む。

…絶対だよ?アッちゃん。

その言葉、忘れんなよ?

「…そろそろ、行こうぜ?」

植え込みから身を起こして、単車に向かおうとするアッちゃん。

オレはその背中に告げる。

「オレ、アッちゃんのそーゆートコ、すげー好き…」

本当に好き。アッちゃんがこーいう奴で嬉しい。

そういうオレは自分勝手なんだろうか。







「絶対」なんてねーし。

「死」は必ず訪れる。

望む望まないに関わらず。

自分の思い通りにならないから悲しいんだ。

オレだって、それくらい分かってる。

でも。







「アッちゃん、長生きしよーね」

「ああ」

あたりめーだろ?って言ってオレの方に腕を伸ばすアッちゃん。

ああ、アッちゃんはオレのして欲しい事が何故だか分かるみたいで。

アッちゃんにギュウ、ってされながら、オレはアッちゃんの暖かさとか、力強さとか、匂いとか

色々感じて嬉しくなる。

何より、ちゃんとドクドク言ってる心臓が。

オレはアッちゃんの腕の中で思う。

ずっと、一緒に長生きして。

オレが死ぬ時も横にいて。







「長生きしよう」

アッちゃんは何気なく返事したかもしれないけど。

コレは約束だから。

破ったら許さねえよ?
















―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
☆日頃いつ死んでもおかしく無いような生活をされてるので、ちょっと死について考えてみた……。
は〜…今読んでる9巻でマー坊死にかけてたんですよ。
さらに、最近灰二さんとこで読ませて頂いたSSでは緋咲が天羽の死についてなんや色々思ってるのです
よ。
(風邪ひいてて高熱に弱った頭には結構キました・笑)
で、秋マーならば、どんな感じだろう…と妄想。
実は…大の苦手ですね〜死にネタは。(注:これは死にネタじゃないけど)
特拓では実際、キャラが死んでるから多そうですけどね。
苦手っていうのは、わざわざ死んでないキャラを死なすネタ…てので。特に病気ネタとか。
何で?!って思っちゃいます。パロの世界でも不幸は嫌だ…。
というか悲しいんですよ。単純に。だから苦手なんです(笑)

で、アッちゃんと、マー坊の関係はこんな感じ?と勝手に捏造いたしました(笑)
ああ、アッちゃんが男前に仕上がってると思います(笑)
「アキマー天国」で散々言ってますが、アッちゃんはマー坊を泣かせたくないんです。


(2003.11.17)
戻る