(注意:視点はオリキャラの刑事です。
     雰囲気で描かれているので組織の仕組みやなんやら意味不明です…。)

真嶋と鮎川

爆音を轟かせて疾走する単車の集団。 
何十台と後ろに引きつれて、その先頭を走るのは忘れもしないあの少年。 



俺、柏原正也。29歳。職業、刑事。
少年課でもなければ交通機動隊でもない俺は、少年の補導や暴走族の取り締まりには関与してない。
だから本来ならば、この少年との関わりは無いはずだった。
一年前のあの事件以来だ。



鮎川マサト。金髪と華奢な体躯。
そしてその顔は幼く可愛らしい。 
その可愛らしい見た目に反して、凶暴な暴走族の頭。

スピンターンを決めて俺の前で停車する。
「ヨォー、久しぶりじゃん?」 
後続の車両が次々と停車する。 
「マー坊、どーしたよ…?」 
マサトのすぐ後に付けていた大柄な少年がすぐ後ろに停車して言う。真嶋だ。
「ヨー、マー坊くん、どしたん?!」
「ナニ?!どーかしたべ?!」
次々と停車する単車の主が、口々に叫ぶ。
辺りは何台もの単車のライトとエンジン音、それに負けじと叫ぶ声とで、急に祭りのような喧騒だ。
「ん、先行っといて。ちょっと知り合い」
他の少年達を振り返ってマサトはにっこりと笑う。
「…オウ、B突だ!B突で集合すっからよ…先行ってろ!」
マサトのすぐ後ろに停車させていた真嶋が、後続の車両に向かって叫ぶ。
「みんな、先行ってて〜」
マサトはにっこり笑ってそう告げて、単車の群れを見送る。
爆音と大量の煙を残して、その場にはオレとマサト、真嶋が残った。
真嶋だけは他の奴らと一緒にその場を離れる気配は無い。
ただ、静かにオレの事を観察している。
落ち着いた仕草でタバコを取り出し、火をつける。
そうして一服しながらも、オレの事、じっと観察している。
特隊の「真嶋」。
こいつがマサトともう一人…この「爆音」の中での重要人物だった。
同じ年頃の少年達に比べて、落ち着いた印象を受ける人物だ。
一年前に会った時よりも、またひとつ大人びている。
一方、マサトは一年前とあまり変わってない。
相変わらず、可愛い。そしてちっこい。
こいつの事、何も知らなかったら、族の頭だなんて思わないだろう。
「でさー、何してんの?」
後ろの真嶋の事を気にするでも無くマサトはオレに話し掛けてきた。
「捜査??」
楽しそうにマサトは聞く。
「捜査」なんてのはコイツにとっては遊びの一つみたいなものなのだろう。
「アッちゃ〜ん、コイツ覚えてるよな?すげー久しぶりじゃん??」
くるりと後ろを振り返り、真嶋に告げる。
「ああ、そだな…」
嬉しそうなマサトに反して真嶋はかなりそっけない。
あの時の事、絶対根に持ってるに違いない。
返事はそっけないが、オレへと視線を合わせてくる。
その目が『テメーあん時の事忘れんなよ…?』とでも言いたそうなので、
俺は思わず笑ってしまった。
笑うといっても唇が持ち上がるくらいの物だけど。



微笑ましいような、こいつらとの一年前の記憶が蘇る。







(2005/06/05)

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オエビで書いた時は刑事、アッちゃんとは面識無い設定だったんですが、ちょっと知り合いみたいになりました。
刑事=柏原
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